真のグローバル化に向けて

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2011年05月30日

  • 間所 健司
最近、相次いで海外企業の大型買収が発表されている。武田薬品工業は、スイスの製薬大手であるナイコメッド社を96億ユーロ(約1兆1,100億円)で買収することを発表した。買収金額が武田薬品工業の年間売上高に迫る大型買収である。その同日に、東芝がスマートグリッドとスマートコミュニティ事業の展開を加速させるために、23億ドル(約1,800億円)を投じて、スイスのランディス・ギア社の買収を公表した。国内企業が海外M&Aを積極化させ、グローバル化に向けた動きとして注目したい。

海外M&Aが活発化してきているのは、国内企業同士のM&Aが年々増加傾向にあり、企業経営者のM&Aに対する拒否反応が薄れてきたこともひとつの要因かもしれない。

そもそも、海外企業の買収の大きな理由としては、国内市場が成熟化した産業において、新しいマーケットを海外に求めるための手段であったり、多角化や自社の弱い部門の強化といったものもある。特に、海外企業を買収することにより、時間を節約し、一気に規模を拡大できるというメリットが大きい。

しかしながら、単純に海外企業を買収したからといってグローバル企業の仲間入りしたことにはならない。グローバル化とはいかなるものであろうか。私見ではあるが、そのヒントは日本板硝子にあると思っている。

2006年に日本板硝子が英国のピルキントン社を約18億ポンド(約3,600億円)で買収したことは記憶に新しい。このときの日本板硝子の連結売上高は一気に2.5倍(2006年3月期 2,658億円、2007年3月期 6,815億円)となった。そして、現在12名いる取締役のうち、社外取締役を除く8名の半数が日本人ではない取締役が占めている。製造や販売といった現業部門だけでなく、経営自体がグローバル化した例といえるのではないだろうか。

わが国の経済環境は、人口の減少、膨らむ国の借金に加えて、東日本大震災の影響もあって不透明感が増している。国内企業が海外に市場を求めるのは当然と思われる。

真のグローバル企業とはどんなものなのか。定義することは難しいが、海外の売上比率が高いとか、海外に製造・販売拠点が多数あるとか、社内公用語が英語であるといった単純なことではないだろう。

いずれにしても、わが国のいかなる産業(一部例外はあるだろうが)も、海外市場に目を向け、グローバル化していかなければならないときが来ていることは言うまでもない。

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