SRIファンドのパフォーマンス:ネガティブ・スクリーニングが有効か

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2011年05月25日

  • 伊藤 正晴
SRI(Socially Responsible Investment:社会的責任投資)は、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)から成るESG要因を投資プロセスに加えることで、企業の成長性やリスクなどを多角的に捉え、投資パフォーマンスの向上や社会への貢献などを目指す投資とされている。そこで、Eurekahedge(※1)のデータを用いて、実際のSRIファンドのパフォーマンスを検討してみた。

投資対象地域がアジアとなっているSRIファンドを対象に、2007年末を基準とするリターン指数を作成したところ、株式市場全体とほぼ同様の動きを示すことがわかった。データが利用可能なファンドのみであるが、SRIファンドの平均的なパフォーマンスは、株式市場全体に投資するパッシブ運用と同様であり、特に優れたパフォーマンスを獲得してはいないようである。

ところが、最近の2年間の個別のファンドのリターンをみると、実はファンドによってリターン水準が大きく異なっている。市場全体の年率リターンは35.4%であったが、SRIファンドはリターンが10%以下のファンドや、50%を超えるファンドなど、リターンに大きな格差が生じている。

より詳細にみると、リターンが下位の3ファンドは株式ロング・ショート戦略のヘッジファンドであった。この戦略は市場全体の動向に左右されず、安定的にリターンを獲得することを目指すものであり、必ずしも高いリターンの獲得は目指していないため下位となったようである。次いでリターンが低位であったファンドは、環境関連などに積極的に投資するポジティブ・スクリーニングを採用しているファンドであった。

一方、リターンが上位のファンドは軍需産業、タバコやアルコール関連などを投資対象から除外するネガティブ・スクリーニングを採用するファンドや、これらネガティブ・スクリーニングと環境などに関するポジティブ・スクリーニングを併用しているファンドであった。限られたデータではあるが、ネガティブ・スクリーニングがリターンに寄与しているのかもしれない。

もちろん、アジアに投資するファンドであっても、実際に投資する国やベンチマークの違いなど、さまざまな点を考慮する必要はあるが、SRIファンドはファンドによってリスク・リターン特性が大きく異なっていること、そしてファンドの採用する運用手法の違いがその特性に影響している可能性があることがわかる。

(※1)Eurekahedgeのデータは、各運用機関及び外部の情報を元に作成しております。Eurekahedge及びその関係者は情報の正確性、完全性、市場性、仮定、計算などについて保証を行っておりません。情報の閲覧・利用者は、データの使用に際して、情報における全てのリスクを認識し、負う必要があります。Eurekahedgeではデータ及び情報に基づくいかなる理由の損害に関しても責任を負いかねます。データは、特定のファンド、有価証券、または金融商品、会社への投資に関する勧誘或いは販売勧誘を構成するものではなく、また、独立、金融機関、専門家としての助言として解釈されるべきではありません。

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