震災復興計画に求められる“まちづくり”の議論

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2011年05月09日

  • 横塚 仁士
3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により甚大な被害を受けた東北地方の復興に向けた議論や計画の策定が開始された。

民主党の東日本大震災復興ビジョンチームは4月30日付で「復興ビジョン(仮・日本再生構想)の課題の整理」を公表した。また、宮城県は5月2日に「震災復興会議」を発足し、8月までに復興計画を策定する方針である。報道によると同会議では自然エネルギーなどを活用し、震災前よりも発展したまちづくりを目指すことなどが議論されたという(※1)

震災から復興に向けた過程では、宮城県を含め東北地方の多くの自治体において防災体制の強化、エネルギー政策の見直しなど、新しい都市のあり方が議論されると考えられる。

ここで筆者が特に注目しているのは、今後の議論を経て東北の各地域の復興計画において「コンパクトシティ」という概念がどの程度反映されるのかという点である。

コンパクトシティとは、歩いて暮らせるまちづくりを重視する概念で、日本では中心市街地の空洞化や高齢者の移動困難性などの問題を解決するという点から注目された考え方である。また、近年では、自動車に比べてCO2などの温室効果ガスの排出量が少ない鉄道などの利用促進と合わせて環境負荷の低減という面でも注目されている。

先に紹介した民主党の「復興ビジョンの課題の整理」では、人口の流出や都市の高齢化など東北地方が抱える課題を考慮して“日本の先駆的モデル地域”として復興させることを目指しており、コンパクトシティの考え方はさらに重要性を増すと思われる。

東北地方では青森市が都市を3つに区分して地区の特性に応じた都市整備の推進を行うというコンパクトシティの具体化に向けたまちづくり (※2)を進めているほか、多くの自治体で関連する取組みが実施されており(※3) 、復興計画と連動する形でコンパクトシティなどの視点を盛り込んだまちづくりが進められることが期待される。

復興への過程でコンパクトシティなどに関する議論がより活発に行われ、東北地方の多くの都市がこれまで以上に住みやすい地域に変わっていくことを期待したい。

(※1)毎日新聞ウェブサイトなどを参照。なお、宮城県震災復興会議の開催にに先立って公表された宮城県震災復興基本方針(素案)が宮城県のウェブサイト内において公開されている。
(※2)青森市では、中心市街地周辺の「インナー」、居住区としての充実を図る「ミッド」、自然環境など景観の維持などを図る「アウター」に区分して都市整備を実施している。
(※3)東北地方におけるコンパクトシティに関する情報は「東北発コンパクトシティ」のウェブサイトをご参照されたい。

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