米国個人投資家の情報源に変化の兆し

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2011年03月29日

  • 清水 克哉
最近、個人投資家同士が投資に関する知識や戦略などを情報交換できるソーシャルメディアサイト(以下、投資コミュニティ)が米国の個人投資家から注目されている。

インターネット上には信頼できるまとまった情報が多くなったため、個人が金融・投資関連情報を入手することが容易になった。個人投資家、とりわけアクティブ投資家(※1)は、そこから得られた情報の整理・分析が投資成績に差をつける重要な要素となっている。情報を最大限活用するためには、投資の知識を増やし経験を積む必要がある。そして証券会社はそれを手助けするために、幅広い層の投資家を対象にした教育プログラムの提供が求められる。その教育にはある程度の長い期間を要すると考えられる。

このような個人投資家と証券会社の相互のニーズを満たし、個人投資家の知識や経験を高める機能が投資コミュニティにある。これには、オンライン証券会社が自社ウェブサイトで運営する投資コミュニティ(※2)又は一般のウェブサイトで運営される投資コミュニティがあり、幅広い層の個人投資家をターゲットにしている。

個人投資家は投資コミュニティに自分自身の投資銘柄やポートフォリオを書き込む。また、他の個人投資家の投資情報を参照し、それを基にして投資を行ったり、自分の投資戦略などを改善したりしている。投資関連情報を立場に関係なく相互に交換できる点も魅力的である。このように個人投資家は、相互に教えあうことで投資リテラシーを高めていくことができるのである。ただし、個人投資家は情報交換の当事者になるだけではない。投資コミュニティに書き込まれる投資関連ニュースや他人の情報交換の内容を参照するだけの場合もある。こういった集積された情報を投資に利用する個人投資家も増えている。

ある証券会社は、トレーディングツールを連携させ投資コミュニティから直接取引ができる機能を提供し始めた。このように証券会社が、個人投資家の投資コミュニティを情報源とするトレーディングをサポートする動きもみられる。証券会社には、投資コミュニティを使用してもらうことで個人投資家の教育にかかる時間と手間を省略する狙いもある。

日本でもいくつかの投資コミュニティが開設・運営されている。一部の個人投資家が使用しており、投資家同士の情報交換の場として主に利用されている。日本の投資コミュニティは、今後も様々な視点からますます発展していくとみられる。

(※1)取引を頻繁に行う投資家のこと。証券会社ごとに月間一定回数以上の取引を行うなどの条件を定義している。例えばチャールズシュワブ社は、株式、オプション取引を年間120回以上又は四半期に30回以上行う顧客と定義している。
(※2)オンライン証券会社による投資コミュニティは主に2種類ある。1つ目は、顧客のみが閲覧・書き込み可能な自社サイトで運営する投資コミュニティである。2つ目は、誰でもアクセスが可能な一般ソーシャルメディアサイトに開設・運営する投資コミュニティである。

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