大震災を受けた東京株式市場
2011年03月24日
3/11に発生した地震や津波による大規模な被害が明らかになる中、3/14の日経平均は633円安と急落した。さらに、福島原発のトラブルが深刻化したことが嫌気され、翌3/15の日経平均は1015円安と大幅に続落し、歴代3位の下落率を記録した。一方、3/16の米国市場で日本の投資家が外貨建て資産を売却するとの見方が強まると円/ドルレートが急伸し、翌3/17の東京時間早朝に1995年4月に付けた過去最高値を更新した。これを受けて、翌3/18朝に開かれた緊急のG7財務相・中央銀行総裁会議で各国は円売りの協調介入を実施することで合意し、各国は順次円売り介入を実施した。
今回の震災で被害が大きかった東北3県(岩手・宮城・福島)の経済規模は20兆円強で、阪神大震災で被害が大きかった兵庫県と概ね同額である。しかし、民間調査機関の試算では、今回の震災の被害総額(建物や社会資本などの損害額の合計)は最大20兆円と、1995年の阪神大震災の被害総額(9.9兆円)を大きく上回る公算が大きくなったと伝えられている。今回の震災では津波の被害が広範囲に及んでおり、インフラへの震災が阪神大震災よりも大きいという。
阪神大震災当時の鉱工業生産や輸出は震災が発生した月こそ前月比で減少したものの、全体として震災の影響は限定的だった。阪神大震災の被害地域には住居や商業施設が多かったが、企業の生産拠点は比較的少なかったと考えられる一方、今回の震災では企業の生産拠点が多数被害を受けた。今回は電力供給が生産回復のネックになる可能性も含めて、震災が企業の生産活動に及ぼす影響に注意する必要があろう。
一方、元モルガン・スタンレーの著名ストラテジストで、ヘッジファンド経営者のバートン・ビッグス氏は地震を受けた東京株式相場の急落を「甚だしい過剰反応だ」と述べ、「私は今まさに日本(株)を買っている」と明言したと伝えられた。また、米有力投資週刊紙バロンズは3/21付で「バイ・ジャパン・ナウ(今、日本を買え)」と題した特集記事を掲載し、東京市場について「災害時にありがちだが、市場が過剰反応しているのは明らかだ」と明言した。外国人投資家は日本株を積極的に買っている可能性があり、注目されよう。
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