ライツ・イシュー利用拡大なるか~株主権に配慮した増資
2011年03月17日
ここ数年来の大手金融グループなどによる大規模なエクイティ・ファイナンスを契機に、本邦資本市場においても、改めて株主価値の希薄化やコーポレート・ガバナンスを含んだ経営支配権に関する論点がクローズアップされている。この点、既存株主の権利保護が必然視されている欧州などの資本市場では、既存株主による新株などの優先引受権が確立されており、具体的には「ライツ・イシュー」が一般的な増資手法の一つとなっている。
ライツ・イシューとは、上場企業が、原則的に全ての既存株主に対して、時価よりも割安な価格で株式を購入することができる新株予約権(ライツ)を無償で割当てるエクイティ・ファイナンスの手法である。我が国でも、株主割当増資が1960年代まで一般的に行われていたが、ライツが上場され市場で売却できる点などが異なっている。ライツ・イシューにおいて、割当てを受けた株主は、払込みに応じなくても、ライツを市場で売却することで、理論上、経済的な希薄化の影響を回避できる。また、大規模な資金調達でも、他の方法に比べれば株主の理解を得られやすいことなどから、増資を行う企業にとっても、安定的な資金調達が見込めるメリットがある。
我が国でも、2009年末にライツ・イシューの利便性向上が図られたこともあり、翌年3月には株式会社タカラ・レーベンによって第一号案件が実施された。当該案件では、予約権割当個数(16,557,562)に対する行使割合が95.7%(15,845,737)となるなど、資金調達としては概ね成功裡に推移したと言えるだろう。
また、本年1月19日に金融庁のワーキング・グループからライツ・イシュー実施にかかる新たな規制緩和案が公表された 。それによると、ライツ・イシューの実務上、大きなハードルとなっていた有価証券目論見書の作成・送付義務を撤廃することなどが盛り込まれており、上場企業の関心も高まっているようである。
ライツ・イシューも増資の一種である以上、短期的に一株当たり利益の希薄化などを伴う点は、その他の増資手法と同じであり、資金使途(エクイティ・ストーリー)が重要なのは論を俟たない。一方、M&Aなどに伴う大規模な資金調達を行う際の有効な選択肢の一つとして期待できることから、今後の動向には注目していきたい。
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