普及するカーシェアリング

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2011年03月15日

  • 大野 順弘
日本でもようやくカーシェアリング(以下、カーシェア)が普及してきた。交通エコロジー・モビリティ財団によると今年の1月時点で全国のカーシェア用車両の台数は3,911台、会員数は73,224人となっている。車両台数は前年の3倍、会員数は前年の4.5倍と大幅な増加ぶりである。

わが国のカーシェアリング車両台数と会員数の推移

カーシェアとは、1台の車を複数の会員で共同利用する形態の事である。
レンタカーとの大きな違いは、利用時間と貸出方法であろう。レンタカーは比較的長時間・長距離利用を前提としているが、カーシェアは短時間・短距離利用を前提としている。また、貸出方法について、レンタカーは「対面貸出し」だが、カーシェアは「無人貸出し」である。「無人貸出し」の場合、レンタカーの申込みや料金支払いなどで貸出店員の介在が一切ないため、車さえ空いていれば、自家用車に近い感覚で即利用できる。

近頃は、大手企業のカーシェア事業参入を背景に、駅の近くや住宅街、コンビニ、マンションなどに続々とカーシェア拠点が設置されている。また、携帯電話による利用直前のネット予約や24時間利用など利便性も向上してきた。

最近、私も徒歩3分圏内にカーシェア拠点ができたこともあり、あるカーシェア会社の会員となった。私自身は自家用車も所有しているが、駐車場が歩いて20分もかかるため、長距離や長時間使用の際は自家用車、短時間のちょい乗りの際はカーシェアを利用するという使い分けをしている。

実際に利用してみて、子供の送迎など日常の用事を済ませるのに大変便利なサービスだと実感する事ができた。更に、自家用車やレンタカーでは感じたことのない新たな二つの「気付き」もあった。
一つ目は、「共同利用会員としての自覚」である。カーシェアは、会員による共同利用のため、会員相互扶助に近い気持ちでないと他の会員に迷惑をかけてしまう事がある。先日利用した際、前利用者の飲み残しの缶コーヒーが置きっぱなしであった。レンタカーであれば店員さんが清掃済みの車を用意してくれるがカーシェアはそうでない。会員一人一人が共用の車を大切に扱うという精神がなければ、心無い利用者の行為が他の会員の不満指数を上げることに繋がる。ガソリンが不足していれば給油する、リクライニングを戻す、予約時間をオーバーしないなど最低限のモラルを守り、次の予約会員に気持ちよく利用してもらうための配慮が必要になろう。

二つ目は、「時間に対するコスト意識の自覚」である。カーシェアの料金システムは、利用した時間で課金される仕組みである。レンタカーのように8時間とか24時間といった長時間でなく、数十分単位での課金となる。よって、いかに目的を所定の時間内で達成できるかを事前に検討する必要があるわけだ。目的地に到着してから駐車場に入れた場合、食事や買い物といった車を使っていない時間も課金されるため、用事を効率的に済ませようという意識が高まる。自家用車の所有コストに比べればはるかに安い料金で利用できるのに係わらず、借りている時は常にコストを意識してしまう。

以上2点はあくまで個人的な感想であるが、カーシェアを今後利用しようと思っている方やカーシェア事業者の方に少しでも参考になればと思う。

日本のカーシェア市場は急ピッチで拡大してきているとは言え、6カ国で比較すると歴史は浅く、まだまだ発展途上段階にある。今後の更なる成長に期待したい。

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