ドル・円相場の分岐点
2011年03月10日
ドル・円相場は、ドル安要因の「地政学的リスク」とドル高要因の「米景気回復期待」が綱引きするかたちとなり、はっきりとした方向性が出ていない状況にある。
まず、リビア情勢の緊迫化などによる地政学的リスクの増大が、「ドル安・円高」圧力として働いている。第一に、モノの価値と通貨の価値は反比例しやすく、ドル建て原油価格の急上昇は、通貨ドルの価値を押し下げる効果を持つからだ。第二に、原油高が景気に与える悪影響を懸念して世界的に株価が下落するなど、リスク回避的な動きが低金利通貨である円の買い要因になっている。第三に、供給懸念による原油価格の上昇が、期待インフレ率を上昇させ、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利を低下させている。そして、期待インフレ率上昇による実質金利低下は、日本よりも米国の方が大きく、ドル安・円高に作用している。つまり、地政学的リスクが景気悪化懸念を生むことによる“原油高・株安・実質金利低下”という状況が、ドル安・円高に作用しているのである。
一方、米国の景気回復期待が、「ドル高・円安」圧力として働いている。すでに米国では、株高などの資産効果を背景に個人消費が拡大を続けているが、それが雇用拡大に結びつき始めている。雇用拡大が失業率を大幅に低下させるのに十分でないとして、FRBは量的緩和をしてきたが、追加緩和の必要はないとする当局者が増えてきている。また、景気回復を背景に期待インフレ率が上昇を続けているだけでなく、現実のインフレ率も上昇率を高めている。数ヶ月以内に米国の消費者物価が前年比で2%を超える可能性もあり、インフレを警戒して将来的な金融引き締めを示唆する当局者も出てきている。そして、景気回復期待が米国の長期金利を日本よりも上昇させ、ドル高・円安に作用している。
原油価格が世界経済の拡大ペースに見合った価格レンジの上限近辺まで上昇している一方で、ドルの実効為替レートは2008、09、10年の安値を結んだトレンド近辺まで下落している。今後、地政学的リスクによる原油価格上昇が続いてドル安・円高となるか、それとも米国の景気回復期待が利上げ期待を高めてドル高・円安となるか、まさに分岐点にある。
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