子ども手当について、すべての人の声を聞いてみるべき
2011年03月03日
子ども手当は評判が悪く、そんなバラマキではなくて、保育所の整備に予算を使うべきだという人が多い。しかし、小さな子どもを預かるのはコストがかかる。前にも書いたことがあるが、保育所で一人預かるのに、月19万円かかる。それに対して、保育料は高くても3万円である。すべての子どもを預かるには、子ども手当より多くの予算を使わなければできない。
また、地方に行けば、保育所は余っている。子どもも少なく、祖父母が預かっている場合が多いからだ。すると、都会の保育所ばかりにお金を使って、地方にお金を使わないのは不公平ではないか。日本は、地方にお金を配ることが好きなのに、何故、都会の保育所にお金を配ることがそれほどに支持されるのだろうか。子ども手当で子どもを預かってくれる祖父母に援助ができれば良いことだと思っていた私には意外なことだった。現実には、地方も子どもが減り、子ども手当ではたいした支持は得られないようだ。子ども手当で地方の女性の支持を得られると思っていたらしい民主党としては誤算だった訳だ。
一方、私の知っている夫婦には、保育料を上げて、保育所に確実に入れるようにして欲しいという人が多い。19万円かかる保育所を、すべての子どもを預かることができるほど作るのは無理だから、親の負担を上げて保育所を増やして欲しいという訳だ。ところが、そんな声はマスコミには載らない。私の知っている夫婦は、夫婦とも大企業の正社員、官僚、アナリスト、ジャーナリスト、弁護士、大学教授という人たちで、いまはそれだけなくても、10数年後には夫婦で年収2000万円という人が多いから、確実に預かってくれるなら保育料10万円を払いたいということなのだろう。しかし、こういう人は少数派だ。
マスコミの論調には、地方で祖父母に頼りながら子どもを育てている人も、都会で相対的に高い収入を得ながら子どもを育てている人の声も反映されない。反映されるのは、3万円なら子どもを預けて働きたいという人の声だ。おそらく、こういう人が圧倒的に多数派だからなのだろう。しかし、現在の財政状況で、19万円かかることを3万円でサービスするのは無理な話だ。待機児童は永久になくならない。
単に多数派ではなくて、すべての人の声に耳を傾けてみることが必要なのではないだろうか。
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