インドネシア:ピンチをチャンスに変えた国
2011年01月19日
インドネシア経済は好調を続けている。1997年のアジア通貨危機当時を鮮明に記憶している人からすれば、やや意外感があるかもしれないが、今のインドネシアは、昔のインドネシアではない。インドネシアは、アジア通貨危機というピンチをチャンスに変えて生まれ変わった。ここでは、アジア通貨危機当時と現在の比較をしてみよう。
1.政治体制は民主化へ
第一に言えるのは、やはり政治体制の違いである。アジア通貨危機当時の政治体制は、スハルト大統領の長期政権という状況にあった。スハルト大統領は、成長に関して一定の成果を残したが、開発独裁とも言われるように、大統領のファミリー企業や一部の財閥のみに成長の果実が行くような仕組みであったため、分配面でのゆがみは相当に大きかった。一方で、2004年に就任したユドヨノ大統領は、汚職撲滅、透明性向上、開放経済などをスローガンに、民主化に向けた政権運営を行い、2004~2009年の第一期政権では、それなりの成果がでてきたとの評価を得ている。もちろん、スハルト時代の縁故主義や賄賂体質をすぐには変えるのは難しいとしても、時間をかけながら、少しずつ変えていっているという印象である。
第一に言えるのは、やはり政治体制の違いである。アジア通貨危機当時の政治体制は、スハルト大統領の長期政権という状況にあった。スハルト大統領は、成長に関して一定の成果を残したが、開発独裁とも言われるように、大統領のファミリー企業や一部の財閥のみに成長の果実が行くような仕組みであったため、分配面でのゆがみは相当に大きかった。一方で、2004年に就任したユドヨノ大統領は、汚職撲滅、透明性向上、開放経済などをスローガンに、民主化に向けた政権運営を行い、2004~2009年の第一期政権では、それなりの成果がでてきたとの評価を得ている。もちろん、スハルト時代の縁故主義や賄賂体質をすぐには変えるのは難しいとしても、時間をかけながら、少しずつ変えていっているという印象である。
2.中間層拡大に伴う消費ブーム
第二に、消費の中心とも言える中間層の割合の違いである。スハルト時代は、その配分手法や発展段階の観点(一人当りGDPは1000ドル程度)からして、中間層といわれるグループの存在は目立たなかったが、現在では、中間層の割合が、かなり厚みを増してきている。これらの人々が中心となって、電気冷蔵庫、電気洗濯機、オートバイ、自動車などの耐久消費財への消費を増やしてきている。耐久消費財の普及スピードに関しては、日本の1960~70年代を見ると、大体、5~10年くらいを目処に、相当の割合まで普及しているのがわかる。このことから推測すると、インドネシアにおける耐久消費財ブームは、流れが止められず、5~10年くらいは続くということになる。人々の財への欲求という素朴なものだが、だからこそ、安定的に推移していくことが予想される。
第二に、消費の中心とも言える中間層の割合の違いである。スハルト時代は、その配分手法や発展段階の観点(一人当りGDPは1000ドル程度)からして、中間層といわれるグループの存在は目立たなかったが、現在では、中間層の割合が、かなり厚みを増してきている。これらの人々が中心となって、電気冷蔵庫、電気洗濯機、オートバイ、自動車などの耐久消費財への消費を増やしてきている。耐久消費財の普及スピードに関しては、日本の1960~70年代を見ると、大体、5~10年くらいを目処に、相当の割合まで普及しているのがわかる。このことから推測すると、インドネシアにおける耐久消費財ブームは、流れが止められず、5~10年くらいは続くということになる。人々の財への欲求という素朴なものだが、だからこそ、安定的に推移していくことが予想される。
3.経常収支は黒字基調、潤沢な外貨準備高
第三に、対外面の動きである。アジア通貨危機と現在の状況を比較した場合、マクロ的な指標としては、この点が、一番違うことを強調したい。アジア通貨危機が起きるまでは、インドネシアの経常収支は赤字であった。これは、成長に向けた資本財輸入などが増加する一方で、経済の実力から乖離した為替レートの存在によって、輸出が伸びなかったことが主な要因である。この当時、ルピアは、ドルペッグ制を採用していたが、1990年代後半、ドル高が進んだ結果、ルピアが自国の経済的実力から、どんどん乖離していったのである。経常収支赤字基調の中で、当然、外貨準備高も不足気味で、まさに、外国の資金に大きく依存した経済成長という姿であった。結果、アジア通貨危機にて、外国の短期資金が一斉に引き上げた結果、流動性不足に陥り、経済が破綻していくことになった。一方で、現在の状況はどうかと言えば、経常収支は黒字基調が続いている。これは、為替水準が実態経済にあった水準にあることや商品市況が堅調なことなどから、輸出がしっかりしていることが主な要因である。経常収支黒字基調の結果、外貨準備高は、積みあがってきており、1000億ドルに迫る勢いである。この点からすると、仮に、アジア通貨危機の時のように、外国からの短期資金が引き上げたとしても、それへの対処資金は十分にあるということになる。
第三に、対外面の動きである。アジア通貨危機と現在の状況を比較した場合、マクロ的な指標としては、この点が、一番違うことを強調したい。アジア通貨危機が起きるまでは、インドネシアの経常収支は赤字であった。これは、成長に向けた資本財輸入などが増加する一方で、経済の実力から乖離した為替レートの存在によって、輸出が伸びなかったことが主な要因である。この当時、ルピアは、ドルペッグ制を採用していたが、1990年代後半、ドル高が進んだ結果、ルピアが自国の経済的実力から、どんどん乖離していったのである。経常収支赤字基調の中で、当然、外貨準備高も不足気味で、まさに、外国の資金に大きく依存した経済成長という姿であった。結果、アジア通貨危機にて、外国の短期資金が一斉に引き上げた結果、流動性不足に陥り、経済が破綻していくことになった。一方で、現在の状況はどうかと言えば、経常収支は黒字基調が続いている。これは、為替水準が実態経済にあった水準にあることや商品市況が堅調なことなどから、輸出がしっかりしていることが主な要因である。経常収支黒字基調の結果、外貨準備高は、積みあがってきており、1000億ドルに迫る勢いである。この点からすると、仮に、アジア通貨危機の時のように、外国からの短期資金が引き上げたとしても、それへの対処資金は十分にあるということになる。
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