スマートフォンにより地殻変動が起きる携帯電話向けサービス・コンテンツ市場

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2011年01月18日

  • 細井 秀司
株式市場で話題となっているスマートフォン。お持ちの方もいらっしゃると思うが、便利な反面、不便さも感じていることだろう。従来の携帯電話(モバイル)と比べて、便利な面は
○画面が大きく、表示が精細である
○操作にタッチパネルを使用しており、操作性が格段に良い
一方で不便な面は
○iモードやEZwebなどの従来型の携帯電話向けネットワークに(現在は)繋がらない
○形状が大きいため、そのままでは通話しにくい
になる。

米アップルの「iPhone」のヒットにより、スマートフォンは当たり前かのように消費者の間に浸透し始めた。いまや国内の携帯電話事業者大手3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル)はこぞってスマートフォンの新機種投入を図っている。

しかし、不便な面への解消は途上の状況。iモードで使い倒していたSNSが使えなかったり、ゲームなどのコンテンツにアクセスできなかったりと問題は山積みである。

一方で、ここに商機があると見ている事業者も多い。

アップルのiPhoneは世界でほぼ同一の機体を使用している。つまり、言語対応さえ出来れば、日本のサービスをそのまま世界に展開することが可能になっている。実際のモノの輸出などに比べて、海外進出のハードルは非常に低いといえる。

また、スマートフォンのネットワーク構造はモバイルと異なり、iモードのようなモバイル専用ネットワークを介さずに直接パソコン(PC)で利用するインターネットに接続する。この場合にサービスとして親和性が高いのは、従来携帯向けではなくPC向けのサービスなのだ。今までPC向けのサービスを展開してきた事業者は、別口でモバイル対応をせざるを得なかったが、今後はPC向けサービスをそのままスマートフォンへ持っていくことが可能になる。PC向けに強かった事業者にはビジネス領域の拡大が期待される。

日本のスマートフォン市場は携帯電話の稼働台数で1割に満たない水準にあるため、競争が熾烈であるというほど厳しい状態ではない。しかしわずか2年先には稼働台数で国内の2割程度がスマートフォンになると大和証券CMでは予想している。

競争が激しくなる前にコンテンツの移行、作り込みを済ませて顧客を取り込み、稼働台数の増加がピークに達した頃にはコンテンツのブラッシュアップにより、さらなる顧客の取り込み、囲い込みを行う。こうした戦略を持っているコンテンツプロバイダ(CP)は多そうだ。

残念ながら戦略を実行できるだけの資金力を持っていないCPが多いのも事実。その一方で、CPの中には、既存のモバイルサイトをスマートフォン向けに自動変換するソフトを開発、事業化したところもある。

モバイル、PCの双方からコンテンツ、サービスがスマートフォンへ流れ込んでいくという地殻変動は、始まったばかりである。

12年末には携帯電話の稼働台数で2割に近づく国内スマートフォン

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