景気「二番底」回避でも金融緩和の「時間軸」を意識する一年に

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2011年01月11日

  • 野口 麻衣子
昨年末から年始にかけて公表された経済指標等は、比較的良好な内容のものが目立っている。国内の鉱工業生産指数は、日本経済の「踊り場」症状を最も典型的に表してきたが、直近値は6カ月振りに低下に歯止めがかかったうえ、予測指数でも高めの伸びが見込まれている。また、米国企業の景況感を示すISM指数も、7カ月振りの水準まで上昇。特に、製造業、非製造業とも受注が力強さを増したことは、今後、遅れている雇用環境の改善を支える動きとして評価できる。春先にかけて、欧州周縁国が大量の国債借換えを乗り越えていく過程で、財政運営に関する懸念の高まりから国際金融市場が再度不安定化し、急速な円高を招くなどして景気腰折れの引き金となるリスクを完全に排除することはできないが、景気に対する一頃の過度な悲観は後退し、「二番底」回避の可能性は高まりつつある。

一方で、この間、日本銀行の資金供給オペレーションは「札割れ」が相次いでいる(図表参照)。市場の資金需要を大きく上回る潤沢な量を供給することで、金融緩和姿勢を改めて明確に示そうとしているようだ。これまで、短期金融市場の機能維持を重視していたためか、資金供給オペレーションの大盤振る舞いに慎重に見えたのとは対照的である。もっとも、日本経済が立ち向かうべき最大の課題である「デフレ体質」の改善のために、日本銀行が粘り強く貢献していく意向を示し続けていることには変わりない。こうした強力な金融緩和を推進する方針は、今後強めの指標が先行きに関する不安を少しずつ取り除き、循環的な景気見通しを幾分上振れさせたとしても、構造的な課題克服を支援するために、当面維持されよう。2011年は、金融緩和の「時間軸」が意識され、金利と株価の連動性がやや低下する一年になりそうだ。

共通担保資金供給オペレーション(金利入札方式)の応札倍率

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