2011年のアジア株式市場

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2011年01月05日

  • 由井濱 宏一
2011年のアジア株式市場は第1四半期こそ外需の鈍化などを反映して調整色が強くなるとみられるものの、第2四半期初期頃からは上昇局面に移行していく可能性が高い。背景には、(1)グローバルな景況感の改善、(2)業績伸び率の改善、(3)堅調が予想される中国本土市場、(4)バリュエーションからみた上昇余地拡大、の4点がある。とりわけ(1)、(2)の点が重要で、これまでの流動性主導相場から業績相場へと様相が転換していくだろう。

世界の景気の方向性のカギを握るとみられる米中とも第1四半期を過ぎてくると徐々に景況感が改善する兆しが見え始めると想定している。米国については雇用環境に明確な改善傾向がみられず失業率は高止まっているが、製造業の受注が堅調な動きとなっていることから今後数カ月を経て設備投資の活性化に結びつき、雇用も早晩回復してくるだろう。景気先行指数(OECD、G7ベース)の変化率も11年3月~4月頃には底打ちから上昇に向かうものとみられる。もともと同指数との連動性が極めて高いアジア株式市場は徐々に反発に向かい始める公算が大きい。

こうした環境下で、株式市場は業績の伸びの改善に注目する動きとなるだろう。アジア株式市場の予想EPS(2011年)の伸び率をみると直近(12月第2週時点)は14.8%で、その他アジアの主要市場では10~20%前後の安定した増益基調となっている。また、予想PER水準では、アジア株式市場で12.6倍程度と01年以降のほぼ平均並みである。

また、上述の先進国の景気先行指数の動きはアジア株式市場の予想EPSの動きとも相関が強い。01年からの両者の関係をみると、同指数の変化率が上昇(下落)に向かう時は予想EPSの伸び率も上昇(下落)に向かう傾向にあることが分かる。予想EPSそのものは個々のアナリストの予想の集大成だが、景況感の改善(悪化)に伴って各セクター、各銘柄に対する見方も強気(弱気)に転じ易いことが連動性の高さに現れているのだろう。

足元では、同指数の変化率が低下に向かっていることで予想EPSの伸びも縮小基調にあるが、上述した11年春頃からは先行指数の改善に伴って、予想EPSの拡大局面に入っていく可能性が高い。実はこの予想EPSの伸び率が拡大していく過程ではリビジョンインデックスも改善し、業績予想の上方修正も増加する傾向が強い。01年後半~02年央や、03年央~04年初頭、最近ではリーマンショック後の09年初頭~09年央にかけての時期がそれに相当する。アジア株式市場は11年春頃から業績相場の様相がますます強まっていくことになるだろう。

とはいってもグローバル市場に存在する潤沢な流動性が枯渇してしまうわけではない。先進国の金融政策が出口に至るまでは相当の期間を要すると思われ、米国を中心とした超金融緩和によるベースマネーの増加は継続するだろう。一方、輸出の回復による貿易黒字の米国債への還流増加も加わってワールドダラーは拡大傾向となり、アジア株式市場の押し上げに貢献するだろう。この頃になると金利差よりも黒字幅の拡大に着目したアジア通貨高(米ドル安)が進み易くなり、米国を中心としたアジアへの資金還流は活性化するとみている。

予想EPSと景気先行指数の変化/リビジョンインデックスの推移

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