誰が日本株を買うのか

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2010年12月30日

  • 木村 浩一
我が国の投資信託による国内株式への投資状況をみると、バブル崩壊後の20年間、ITバブル期を除くと、ほぼ一貫して売り越し基調となっている。日本株式と対照的なのが、外国株式、外国債券に対する投資で、2000~2009年の10年間に、外国株式は6.8兆円の買越し、外国債券に至っては18.1兆円の買越しであった。

実は、アメリカの投資信託市場でも、この4年間、国内株式からの資金流出と外国株式への資金流入が継続的に起きている。リーマン・ショック後の先進国経済の低迷と、中国、ブラジルを筆頭とする新興国経済の好調ぶりをみれば、当然の帰結かもしれない。

長期的にみても、今年、GDPで日本が中国に抜かれるなど、先進国より新興国の経済成長率が高く、株式投資も高いパフォーマンスが想定される中では、個人投資家は国内株式よりは外国株式を引き続き選好するだろう。

個人投資家だけでなく、年金も、年金基金による日本株式保有額はピーク時と比べ半減し、今後も日本社会の高齢化により、年金は資金化のため恒常的な売り手になっていく。上場企業の株式の持合いも、有価証券報告書における「株式の保有状況」の開示義務とIFRS(国際会計基準)の導入により、持合いの解消の流れが再び強まっている。

今後、一体誰が日本株を買うのだろうか。

我が国の場合、急速に進む高齢化により個人金融資産の取崩しが始まる一方、財政再建が難しい中で、大量発行が続く国債消化のために国内資金がますます公的部門に取られていく。近い将来、クラウディング・アウトが起きうる中で、日本経済の活力を産み出し、国内雇用を作り出していく企業の設備投資、研究投資のための原資の確保は、重要な政策課題となってくるだろう。企業活力を取り戻さない限り、経済成長の低迷は続き、国民の生活レベルは低下していく。株式市場を活性化し、投資家の日本株離れを止めることは、日本の重要な政策課題ではないだろうか。

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