自由の国

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2010年10月27日

  • 奥谷 貴彦
2001年9月11日の同時多発テロから早くも9年が経過した。弊社ニューヨークオフィスからも徒歩10分の場所で起きた惨事であり、ニューヨーク市民にとってはまだ心に傷跡が残っているようである。9月にかけては、世界貿易センタービル跡地近くのイスラム系コミュニティーセンター建設計画について、各種メディアが賛成派と反対派の議論をさかんに取り上げていた。

世界貿易センタービル跡地には、完成すれば世界で最も高いオフィスビルとなる「1 World Trade Center」を代表とする複合施設が建設されている。「1 World Trade Center」と名づけられるまで、この計画は当初フリーダムタワー(自由の塔)と呼ばれていた。自由はアメリカ建国の精神の重要な柱であり、「法の下の自由」という意味を持つ。自由の塔と呼ばれていた意味合いは大きい。

先日、建設現場を見に行くと、低層階の骨組みをすでに見ることができた。「1 World Trade Center」を含む2棟が2013年に完成すると、マンハッタン南部のオフィス延床面積が約50%増加する大規模なプロジェクトであると言われている。アメリカは出生率が高い中南米からの移民の増加により、先進国では珍しく、今後人口が増加し続けると予測されている。中でもニューヨークは外国からの移民の比率が高い。そのニューヨークを象徴する建築になるだろう。

関西で生まれ育った私は、東京都心とニューヨーク・マンハッタンで1年ずつ働いたことになる。両方の都市を比較すると、東京都心とマンハッタンの違いは、人だと感じる。失敗してもあまり気にしない、前向きな人が多い。明るい人が多い。比較的に開放的な印象を持っている。他の地域から移住するには、東京よりもニューヨークの方が馴染みやすい。

ニューヨークでは東京のポップカルチャーやサブカルチャーに魅了されている人に良く出会う。しかしその一方で東京に留学や研修で滞在した人の内、日本の文化は好きだがニューヨークと比較すると外国人にとって閉鎖的であり、住みたくはないと感じた人も多いようである。アメリカの中でもニューヨークに住んでいるということもあり、アメリカが移民を惹きつける魅力が少しずつ分かってきた。

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