温暖化対策は進まずともエネルギー問題への取組は進展する
2010年10月25日
11月29日から、2013年以降の国際的な温暖化対策の枠組みの交渉が、メキシコのカンクンで開催される(国連気候変動枠組条約第16回締約国会議、通称COP16)。09年12月にコペンハーゲンで開催された第15回会議(COP15)では、新たな枠組みの採択には至らず、合意に留意する形で、実質物別れに終わった。その結果、グローバルな排出権市場創出への期待が後退し排出権価格が一時急落したほか、その後の主要先進国の温暖化対策、特に排出権取引に対する取組も急速にトーンダウンした。
COP15以降の主要国の温暖化対策はほとんど進展していない。それどころか後退している感すら漂う。動向が注視されていたアメリカで、排出権取引などが含まれる気候変動・エネルギー法案が下院を通過したのは09年6月だが、同法案の上院通過は10年7月に断念された。さらに、11月2日の米中間選挙では、温暖化対策に前向きな民主党が議席を減らすことが予想されている。温暖化対策に熱心な議員は、再生可能電力推進やエネルギー効率改善などの共和党の合意が見込める部分を切り離し、採決に向けアプローチを行っている。だがそれらは実質、温暖化対策というよりエネルギー対策である。
残念ながらCOP16を機に流れが変わり温暖化対策が盛り上がることは難しい。新たな枠組み作りにおいては、最大の課題である「先進国から途上国への資金援助」と「資金使途の透明性の確保」について合意する見込みが薄い。EUは条件によっては京都議定書の延長も可能との姿勢を公式に表明した。しかし、現在の米・中・印など大量排出国が参加しない京都議定書の枠組みをそのまま延長することには、EUも日本と同様に否定的な立場を崩さないであろう。
人類の存続の危機脱出のため迅速なグローバルでの対策が必要と主張しながら、国際的な合意を結ぶことはかくのごとく難しい。だが温暖化対策はエネルギー問題と関係が深い。成長著しい新興国では経済成長に必要なエネルギーをどう確保するかは悩ましい問題である。実際、中国やインドでは、省エネ目標や再生可能エネルギー導入目標を定め、着々と次世代のエネルギー・インフラの構築に乗り出している。環境投資に対する熱狂的な期待は過ぎ去ったが、電気自動車や風力、電力網の整備などのエネルギー問題解決への取組は、各国・地域レベルで進展がみられる。
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