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円高対策なのか、円高後対策なのか

2010年10月07日

原田 泰

円は、2008年9月のリーマンショック後本年9月前半までに、ドルに対して3割上昇し、さらに上昇しようとしたところで為替介入がなされた。加えて、政府は、ねじれ国会の中で難しくはあるようだが、円高対策として追加的な財政拡大政策を実施するようだ。

しかし、財政拡大策は円高対策にはならない。なぜなら、財政の拡大は金利の上昇を招き、金利の上昇は円の上昇をもたらすからだ。これは1999年のノーベル経済学賞を受賞したロバート・マンデル教授が明らかにしたことで、中級以上のマクロ経済学の教科書には書かれている(同じことを指摘したジョン・フレミング教授の功績も称えて、マンデル=フレミング・モデルと呼ばれている)。ノーベル賞の大好きな日本人が、なぜマンデル教授の業績を信じないのか、私には不思議である。

また、別にノーベル賞の権威に拠らなくて、いつもデータを眺めているエコノミストであれば、マンデル教授の主張は正しいと実感できる。90年代前半、不況対策として公共事業を増大させていたときには為替レートは上昇していた。その後、公共事業を削減していたときには為替レートは下落した。97-98年不況に対応して公共事業を拡大したときには円高になった。今回でも、リーマンショック後の不況に対応するために公共事業を拡大したら円高になった。

財政拡張政策を円高対策と呼ぶのは誤りである。円高によって生じた不況に対応するための円高後不況対策と呼ぶなら分かる。円高対策なら、円高を直接抑える対策のみが円高対策である。現在行っている非不胎化介入は円高対策になる。為替介入だけでは円高を抑えられず、日本の通貨量を拡大しなければならないというのが最近の実証分析のコンセンサスである(ただし、正しいタイミングで行えば介入だけでも円高対策になるという説もある)。円でドルを買えば、市中に円が流れる。それを日銀が吸収するのが不胎化で、吸収しないのが非不胎化である。不胎化であれば通貨量が増えないが、非不胎化であれば通貨量が拡大する。為替レートとは円とドルとの交換比率であるから、ドルが増えているときに円が増えなければ円高になるのは当然である。リーマンショック以来、ドルは猛烈に増えている。中央銀行が直接コントロールできるマネタリーベースは、アメリカが3倍に増やしているのに、日本は1.1倍にしか増やしていない。円高対策のためには、円を増やさなければならない。円高対策と、円高後対策の区別が重要だ。

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