日銀短観、業種別の動向

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2010年10月05日

  • 細井 秀司
9月29日、9月調査の日銀短観が発表された。大企業・製造業の業況判断DIは、足元(最近)こそ+8と市場予想(+7)を上回ったが、先行きは▲1とマイナスに転じ、市場予想(+3)を大きく下回った。円高進展などによる先行きに対する不安感の表れと言えよう。

一方、企業の為替想定は円高(円ドル想定レート10年度下期、6月調査90.16円→9月調査89.44円)となったが、大企業・製造業の経常増益率は上方に推移(6月調査43.8%増益→9月調査54.3%増益)するなど、企業のコスト削減努力が利益に結実していることを示唆する内容であったといえる。

この稿では業種別の動向に着目してみたい。

業況判断DIで、業種別の9月調査と6月調査を比較し、その変化幅を業種毎にプロットしていくと図のようになる。注目は図の第一象限。業況が足元で6月よりも良くなっており、先行きも6月よりも良くなっている業種である。11業種が対象となるが、その中で変化幅の大きかった業種を見てみると「金属製品」「電気・ガス」「はん用機械」「木材・木製品」「非鉄金属」となっている。

それぞれの業種で上方に変化した要因として、金属製品は猛暑による飲料容器需要の増加や住宅エコポイントに後押しされ住設関連で政策効果が生じたこと、電気・ガスは夏場の猛暑と原料安期待(円高)、はん用機械は自動車生産の回復に伴うベアリングなど部品の生産回復と海外向けのボイラーや風力発電機など原動機が拡大基調にあること、木材・木製品も住宅エコポイントと原料安(円高)、非鉄金属は金などの商品市況の高止まり、などが考えられよう。自動車、電機(電気機械)など輸出産業が足元こそ改善しているが先行きが大きく悪化しているのと対照的である。

図中の丸囲みに位置する業種では、個別の企業ベースでも6月時点よりも業績モメンタムが良くなっていることが想定される。当該業種には投資妙味が高まっていると考えても不思議はないだろう。

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