円がウォンと同じに動いたら

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2010年09月02日

  • 原田 泰
アジア共通通貨構想というものがある。アジアの通貨をユーロのように1つにしようというアイデアだ。私は、これまで、こんなアイデアはとんでもないと思っていた。

そう思っていたのは、(1)アジアは多様で、地域統合をもたらそうという文化的、政治的推進力がない、(2)通貨に関する主権を譲り渡すことなどとんでもない、(3)アジアは最適通貨圏ではないからだ。最後の(3)は説明すると長くなってしまうが、要するに、経済的にうまくいく理由がないということだ。しかし、最近、韓国と日本との通貨統合なら、うまくいくのではないかという気がしてきた。

日本の少なからぬ女性は、韓国のテレビは、日本よりも面白いドラマを作ると考えている。韓国の一人当たり購買力平価GDPは日本の85%まで近づいて、誤差の範囲になってきた。日本も韓国も、同じようなものを生産し、同じような国に販売している。すなわち、文化的、社会的、経済的に統合度を高めることを検討しても良いという機運があるような気がする。

円がウォンと同じに動くとどうなるか。リーマンショック後、円はドルに対して30%上昇したが、ウォンはドルに対して9%下落した。すなわち、円はウォンに対して40%上昇した。円とウォンを通貨統合する前には、EUがそうしていたように、まず、通貨の交換比率を固定する必要がある。交換比率をリーマンショック直前の水準に固定すれば、円とウォンの交換率は常に1円当たり10ウォン(現在14ウォン)で、日本の国際競争力が円の上昇を理由に韓国より低下することはない。国際競争力が低下する理由は、日本の経営者と技術者と労働者の企業家精神、創意、勤勉さが韓国に劣るようになることだけだ。円高という、当事者には分かりにくい理由で日本が不利になることはない。これは分かりやすくてやる気が出る方策ではないか。しかも、1円が10ウォンと分かりやすいから、相互の観光客の誘致にも役立つのではないだろうか。

でもどうしたら、円をウォンの交換比率を一定にできるかという疑問があるかもしれない。答えは簡単である。香港は自国通貨とドルの交換比率を一定にしている。日本の専門家ができないというなら、香港から専門家を雇えば良いだけだ。

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