中間選挙までマクロとミクロに翻弄される米国株

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2010年08月25日

  • 成瀬 順也
8月と想定していた今局面でのNYダウ高値は8月9日の10,698ドルだったようだ。7月2日の9,686ドルからは1,000ドル強上昇したが、予想の1,500ドル上昇には届かなかった。その後は、景気指標の発表や原油価格の下落などマクロ的な悪材料と、M&Aや決算・業績見通しの発表などミクロ的な好材料の綱引きとなっている。

8月中旬にかけ、第2四半期(3~5月期、4~6月期、5~7月期)決算の発表がほぼ終了。最後まで、良好な決算発表であった。8月20日までで全体の96.8%に当たる484社が発表を終え、利益では発表企業の75%、売上高でも同62%が予想を上回る決算を発表している。

セクター別に見ると、利益について金額ベースでは金融、消費シクリカルの順に上振れ率が大きく、エネルギー、ヘルスケア、テクノロジーが続いている。売上高では、テクノロジーのみ上振れ率が大きく、総合的に一番の好決算と判断されるだろう。次いで、産業用財・サービスと消費シクリカルか。コスト削減などによる利益だけのポジティブ・サプライズではなく、売上高、利益ともに予想を上回るという成長シナリオに則ったものとなっている。

ただし、前回シーズン(4月中旬~5月中旬の第1四半期決算発表)とは、大きな違いもある。それは、先行きの見通しについてである。前回は予想を大きく上回る決算発表を受けて、第2、第3、第4四半期の予想も大きく引き上げられた。しかし、今回は、これだけ大きなサプライズとなったにもかかわらず、第3、第4四半期の見通しは引き上げられていない。筆者は、従来2010年後半のアナリスト予想コンセンサスは高過ぎると見ていた。今回、一段の上方修正が避けられた点は、後々の下方修正懸念が大きくならなかったと見れば却って好ましい。一方、2011年前半のアナリスト予想コンセンサスはリーズナブルな数字だと判断している。

しかし、株価に好材料を与え続けてきた決算発表シーズンはほぼ終了。中間選挙までは、M&Aや株主還元の発表が株価押し上げの材料となろうが、そうしたミクロの材料がない日は、マクロ指標に引っ張られることとなろう。例えば、ISMによれば、7月の製造業景況指数の55.5という数字は、GDP換算では実質4.5%成長となる。筆者が想定している現在の米国経済の実力(巡航速度)2.0%成長と比べると、遥かに高い。ISM指数には、更なる大幅低下が予想される。強過ぎる市場の期待が剥落し切るまで、株価は下落トレンドを辿りそうだ。

今後、じり安トレンドを辿るのか、暫く持ち堪えた後に急落を経験するのかを予想するのは難しいが、次の大底は10月中のどこかで、NYダウ8,500ドル程度と予想している。

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