日伯で新たな価値創造を
2010年07月28日
日本から見て地球の反対側にあるブラジル。反対なのは季節や時間だけではない。天然資源の乏しい日本は、近代国家建設の過程で欧米の先進技術を、職人技で磨き上げ、工業製品の輸出国へと変貌を遂げた。対するブラジルは食糧、鉱物資源、エネルギーの宝庫で、各資源を中心に様々な産業複合体を形成してきた。対米一辺倒とのそしりを受ける日本外交とは異なり、ブラジルが得意とするのは米国とEUを天秤にかける外交だ。両国のイメージを挙げると、日本はまとまりが良く堅実だが、面白みに欠け、ブラジルは人当たりが良く発想豊かだが、どこかいい加減と言ったところだろう。双方が理解しあうには努力を要するが、そもそも理解しやすいからといって関係がうまくいくとは限らない。恋愛や友人関係でも似た者同士は反発しあい、自分にないところに惹かれるケースは多い。
ブラジルは2014年にサッカーワールドカップ、2016年にリオ五輪を控え、社会資本整備を急いでいる。7月半ばにリオ-サンパウロ-カンピーナス間の500キロ超を2時間弱で結ぶ高速鉄道計画の入札が公示された。三井物産を幹事とする日本企業連合を含め7カ国が関心を示しており、年内に落札者が決定、五輪前の部分開通を目指す。大統領が「神様からの贈り物」と称した深海油田層プレサルの開発が進めば、ブラジルの石油埋蔵量(2009年で世界16位)は倍増するとの試算もある。このため石油公社ペトロブラスは2014年までに2,200億ドル(約20兆円)を投資する計画だが、日本の金融機関や投資家が資金面で協力することもできよう。また、日本コカコーラは3月より一部商品にサトウキビから作られたペットボトルを採用している。ブラジルの化学メーカーが開発、量産化に漕ぎ着けたもので、資生堂も2011年より導入、2020年までにポリエチレン使用量の半分を石油由来から植物由来に置き換える予定である。
ブラジルは資源を軸とした高い技術力を有し、それぞれの分野を重層的に絡み合わせる発展戦略を志向している。安価な労働力や為替水準をたよりに途上国を生産・輸出拠点と位置づける日本の古いやり方は馴染まず、むしろブラジル企業と協力することで日本の高度な技術力を試し、新たな価値創造に挑む場と捉えた方が賢明だろう。まずは双方の違いを認識した上で、相互補完的かつ水平的な関係が構築できればしめたものである。

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