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資源獲得競争で浮上した「資源税」導入の動き

2010年06月08日

山田 雪乃

「資源税」を導入する動きが、急速に広まっている。

オーストラリアでは、5月2日、「資源超過利潤税」が2012年7月から導入される案が発表された。課税対象が、販売額から利益に変わり、税率も一律40%に引き上げられる。オフショアの石油ガスプロジェクトには、「石油資源使用税」(1987年以来、利益に40%の税率)が適用済み。資源価格の上昇に伴って資源会社の利益は増加しているが、税収は増加していない、と政府は主張している。資源超過利潤税の導入で歳入を増やし、これを財源に非資源産業の成長促進を図ろうとしている。

資源税を検討しているのは、オーストラリアだけではない。中国やインド、ブラジル、カナダ、ペルー、チリでも同様の資源税の導入を検討する動きを見せている。インドでは5月20日、新たな資源税の導入案を明らかにした。新税は、鉄鉱石など非エネルギー資源の国内販売と輸出において、価格の上昇率が生産コストの増加を大幅に上回った際に課税される模様だ。また、中国では5月25日、新疆ウイグル自治区で先行的に、石油や天然ガスへの資源税を従来の従量税から従価税へ変更する政策が明らかにされた。今後は全国区への拡大を計画している。

資源生産国では、資源関連収益からの税収を増やし、これを国内の他産業や国民に再配分する動きを強めている。増税の悪影響がすぐに出るわけではないが、中期的には増税分が販売価格に転嫁され、最終製品価格の上昇圧力、もしくは製造業者の利ざや縮小圧力として働いてくるだろう。

オーストラリアで資源税の導入案が発表された後、資源業界には波紋が広がった。資源大手リオ・ティントは、政府が主張するよりも多く納税していると反論し、スイス系資源大手エクストラータは、豪州で進める炭鉱開発プロジェクトの投資の棚上げを発表した。一方、中国の資源企業は、新税が公平であれば投資意欲は減退しないと発言しており、中国は今後も資源確保を優先する見通しだ。世界的な資源獲得競争が激しさを増す中で、中国が益々その存在感を強める可能性も危惧せざるを得ない。

今後の資源税導入の流れを占う上では、しばらくオーストラリアから目が離せないだろう。政府は関連企業・団体からのヒアリングを元に、10年末までの最終案の策定、11年末までの議会承認を目指している。資源業界の反発で、ラッド政権は新税の適用対象について緩和の姿勢を見せ始めているが、一律40%の税率や、全ての国内産鉱物を対象とする導入要件を緩和しない姿勢を示している。最終案の策定過程では、利益の算出方法や対象プロジェクトの選定などが焦点になってくるだろう。

こうした中、10年10~11月頃には、3年ぶりの総選挙が実施される見通しである。資源税の導入案は選挙の争点となり、選挙結果次第では、資源税の導入ががらりと変わるかもしれない。ラッド政権が続投となった場合、国民の信任を得たとして厳しい内容で導入を進める可能性が高まってくるだろう。一方、導入に異を唱える野党が勝利した場合には、資源税の導入について再検討される余地が広がってくるだろう。

豪州財務省推定、豪州政府

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