「新しい公共」という概念

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2010年03月31日

  • 中野 充弘
鳩山内閣のキーワードの一つに「新しい公共」(a new form of public sector)という概念がある。やや長い引用になるが、昨年10月の所信表明演説、今年1月の施政方針演説から引用してみよう。

《「新しい公共」とは、人を支えるという役割を、「官」と言われる人たちだけが担うのではなく、教育や子育て、街づくり、防犯や防災、医療や福祉などに地域でかかわっておられる方々一人ひとりにも参加していただき、それを社会全体として応援しようという新しい価値観です。》(2009年10月26日、第173回国会における所信表明演説)

《今、市民や非営利組織(NPO)が、教育や子育て、街づくり、介護や福祉など身近な課題を解決するために活躍しています。昨年の所信表明演説でご紹介したチョーク工場の事例が多くの方々の共感を呼んだように、人を支えること、人の役に立つことは、それ自体が歓びとなり、生きがいともなります。こうした人々の力を、私たちは「新しい公共」と呼び、この力を支援することによって、自立と共生を基本とする人間らしい社会を築き、地域のきずなを再生するとともに、肥大化した「官」をスリムにすることにつなげていきたいと考えます。》(2010年1月29日、第174回国会における施政方針演説)

一般的にはパブリックセクターはプライベートセクター(一般企業や個人)と対比され、官庁、地方自治体、独立行政法人、学校法人、公益法人、病院など公的な機関を指す。少し前までは、パブリックセクターというと非効率さや活力の無さが指摘されていた。そこで民営化の手法を取り入れ、効率化・活性化を図るとともに、小さな政府を目指すことが日本だけでなく世界的にみても潮流であった。しかしながら市場メカニズムを重視し過ぎた結果、肥大化したマーケットがコントロール不能となり金融危機を引き起こし、あるいは弱者と強者の格差拡大などの弊害も見られるようになった。

NPOなどを念頭においた「新しい公共」は、成熟した社会における新しい経済主体をイメージしたものといえよう。しかしNPO自体は2000年以降拡大を続けているものの、運営基盤の弱さなど課題を抱えているものも多く、国民からの評価もまだ定着したとはいえない。首相は1月に有識者を集めて「新しい公共」円卓会議を立ち上げ、5月を目処に具体的な提案をまとめる方針だが、公共セクターのあり方全般に大きな影響を与える可能性もあり今後の動きに注目したい。

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