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フィージビリティ・スタディ(FS)再考

2010年03月11日

藤永 恭夫

JALの会社更生法による再生、日本を代表するグローバル企業トヨタの大規模リコールと日本企業のリスクマネジメントのあり方が問われている。JALでは路線計画の合理性・採算性、トヨタでは海外事業の急速な拡張に十分なリスク対応が出来ていたのかである。事業計画の策定の際に、どの組織でも何らかの形で実施し、活用しているものにフィージビリティ・スタディ(FS)がある。環境変化に対応する事業計画の軌道修正は常に必要であり、両者のケースでも過去に実施したFSを活用することが今後の事業展開に有用と思われる。

FSは企業化可能性調査、事業化調査などとも称され、ある事業主体が新規ビジネスへの進出、事業拡大、設備投資等を実施する際に実施するものである。民間企業の場合は、事業の採算性評価などが主な目的であり、技術的及び経済的な両面から調査が実施される。採算性では投資額、プロジェクトの内部収益率(IRR)、投下資本利益率(ROI)などが検討される。公共事業の場合は、道路、空港、ダム等のインフラ事業の実現可能性の検討を政策の妥当性、設備・操業予算の面から検討される。

FSは規模の大小、その目的により、簡易にやることもあれば、実証試験を含み数年がかりで実施することもある。事業の計画時の判断に使うこととあわせて、事業の軌道修正に威力を発揮することを忘れてはならない。マネジメントシステムのPlan(計画)、Do(実施)、Check(評価)、Act(是正・改善)のいわゆるPDCAサイクルのCのステージである。将来誰が評価するにしても、合理的な前提条件の設定プロセスを残しておけば、恣意的な前提条件の要素も少なくなる。しかし、FSは何も定量的な面だけの検討を目的としているものではない。むしろ、雇用創出、環境配慮等に寄与する定性的な面の検討の方が重要な場合もある。昨年来、話題になっている「事業仕分け対象の各プロジェクト」、「基地移設問題」は数値では計れない要素ばかりである。しかし、検討のベースとなるFSの内容次第で、仕分け、代替案の作成が容易にもなれば、煩雑化することもある。

ごく身近な例で見てみよう。例えばラーメン店を出店する場合、立地条件、投資額、経費(従業員の給与、原材料費等)の前提条件を設定し、店の売り上げがいくらであれば採算が取れるかを判断する。客単価、席数等の条件を変え、採算性をシミュレーションする。重要なのは、将来の事業の評価のために、出店の前提条件として何を基準としていたかを明確にしておくことである。来店客数等の基準が明確であれば、容易に拡大、縮小の軌道修正が出来、どの状態になれば撤退すべきかの判断が出来る。この判断が、経営者の腕の見せどころである。

事業を取り巻く環境は目まぐるしく変わり、FSの作成にもコストがかかる。過去のデータ、検討事項を十分活用した無駄のない調査が求められる。いつの時代のCheck(評価)にも耐えうるFS作成を心がけ、常に事業に活用することは企業のリスク対応に寄与することは言うまでもない。

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