新たなモバイル端末の可能性

RSS

2010年03月03日

  • 藤巻 潤一
モバイル通信の次世代ブロードバンド化が進展しつつある。09年にはUQコミュニケーションズがモバイルWiMAX、イーモバイルがHSPA+、ウィルコムがXGPを始め、10年以降にはNTTドコモを先頭に携帯キャリア各社が第3.9世代移動通信システムであるLTEをスタートする予定となっている。

モバイル通信のブロードバンド化により、既存のモバイル端末の普及台数の増加、新しいコンセプトのモバイル端末の誕生、モバイル端末とインターネットを連携させたサービスの広がり、などが期待される。これまでの通信環境よりも飛躍的に高速かつ大容量なモバイル通信インフラが整備されることによって、データ遅延などの問題が起こり難くなる上に、場所や時間に依存しない通信が可能となるためである。

成功事例としては、米国において米Amazon.com社が第3世代移動通信システムを導入した電子書籍端末「Kindle」があり、競合他社も09年のクリスマス商戦から同様の通信機能を持った製品を積極的に投入している。それ以外にも、国内の大手メーカーやベンチャー企業がネットサービスとの連携を強化したデジタルカメラやカムコーダの発売を強化する動きが見られる。さらに、中国Archermind Technology社が携帯電話向けプラットフォーム「Android」を搭載したカーナビの開発に成功したといったニュースもある。

今後、新たなモバイル端末が成功するには、(1)データ遅延などの問題が起こり難く、場所や時間に依存しない通信が可能であるといった次世代モバイルブロードバンドの特性を有効に活用して、消費者ニーズにマッチした付加機能を作ること、(2)仕様が公開されたオープンプラットフォームの活用などによって、製造コストの低減化を図ること、(3)タッチパネルや音声認識など、モバイル端末に最適なユーザーインターフェースを開発すること、(4)既存のネットサービスや別の機器との連携を想定すること、(5)通信料を意識させないような料金体系を構築すること、(6)収益の多様化を図ること、などが重要と見る。

モバイル端末はブロードバンド機能を取り入れるとともに、各モバイル端末の利用用途に合わせた進化を果たすはずである。日本はモバイルブロードバンドやモバイルインターネットサービスなどの分野で世界的に先行しており、端末開発も得意とする分野である。日本の大手メーカーやベンチャー企業からこれまでには存在しない斬新なコンセプトやビジネスモデルを持つモバイル端末が誕生することに期待したい。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。