株高要因から株安要因に変わり始めた「オバマ大統領」
2010年02月25日
2010年1月、米国株は久しぶりに調整局面を迎え、前年3月に始まった上昇相場が終焉を迎えたかどうかの瀬戸際に立たされている。これで上昇相場が終わったとすれば、終止符を打ったのは誰あろう、オバマ大統領ということになろう。
というのも、株価急落の引き金を引いたのは、「オバマ・ショック」とも呼ばれる厳しい金融規制案の発表であった。オバマ大統領(民主党)は共和党が反対せざるを得なくなることを見越し、金融業界に甘い共和党、厳しい民主党という構図を生み出そうとしたのではないか。そのような「奇襲」に頼るほど、オバマ政権は追い詰められたと言えよう。直前に行なわれたマサチューセッツ州の上院補欠選挙で民主党は敗北。同州で共和党から上院議員が誕生するのは1967年以来。97年以降は上院2議席のみならず下院10議席も民主党が独占してきた金城湯池で敗北した痛手は大きい。
実際、当初は世論調査でも数十%の大差で民主党が圧勝すると予想されていた。それが逆転に至ったのは何故か。勝利した共和党候補が強く訴えたのは、一部の無保険層のために税金を投入する医療保険改革への反対であった。超党派の「ひとつの合衆国」をアピールして誕生した筈のオバマ政権が、結局は左寄り路線へと大きく舵を切り、共和党から一人の賛成者もいないままに医療保険改革案を強行可決したツケが出たと言えよう。
米国経済も金融市場も病み上がり状態の中で、金融規制を政争の具にすることは、危険な賭けと言える。金融規制自体は、議会との間で何らかの妥協が図られ、緩やかな規制にとどまるだろう。しかし、金融規制はプロローグに過ぎない。オバマ政権2年目はポピュリズム的な傾向、もっと言えば社会主義的な傾向を強めそうである。中低所得者向けの減税や補助金だけなら良いが、巨額の財政赤字を抱える米国では高所得者への大増税につながる。同様に、中小企業の優遇は大企業の負担増と裏腹の関係にある。超党派の強い大統領を夢見ていた金融市場の期待は裏切られ、国民を「保守」と「リベラル」に二分し対立を深めかねない、弱い大統領に成り下がろうとしているのかもしれない。
結果として、オバマ大統領率いる民主党は、今秋の中間選挙(11月2日)で大敗する可能性が高いだろう。保守派の多くを敵に回すとともに、雇用環境の低迷がリベラル派の一部を幻滅させると見ている。民主党大敗となれば、オバマ政権の政策遂行は一層難しくなろう。しかし、民主党の大統領に共和党議会の組み合わせは、クリントン政権時代のように、株式市場にとっては良いかもしれない。ブッシュ政権時代の負の遺産が資本主義的政策の行き過ぎ、オバマ政権2年目の失速が社会主義的政策の行き過ぎとすれば、民主・共和両党が互いにブレーキをかけ合うことが望まれる。よりバランスの取れた現実路線が採られれば、2011年以降の株式市場に上昇相場入りのチャンスが広がろう。一方、オバマ政権が中道に寄ることなく民主党が勝利した場合には、米国株に長期低迷懸念が広がろう。
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