米中リスクに敏感なマネーの行方

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2010年02月23日

  • 山田 雪乃
2010年に入り、いよいよ米中でも「出口戦略」が模索され始めた。中国では1月、2月と2回にわたって預金準備率が引き上げられ、米国でも2月、公定歩合が0.25%引き上げられた。緊急避難的な大幅金融緩和の修正局面へのシフトに留まるだろうが、警戒感はしばらく残りやすい。

加えて、米オバマ大統領は1月、中間選挙を意識した「金融規制案」を突如発表した。商業銀行がヘッジファンドや未公開株ファンドへの出資や業務支援、自己資金投資を行うことを禁止する内容が含まれている。コモディティ市場へのマネー流入が抑制されるとの懸念が残り、コモディティ価格は10年前半、やや上値が重い展開に終始するだろう。

マネー面で懸念材料が出たとはいえ、世界経済の実態は回復軌道を辿っている。IMFは1月26日、2010年の世界経済成長率を+3.9%と09年10月見通しから0.8%pt上方修正し、米国やBRICs4カ国の成長率も各々1.0pt超上方修正した。11年の世界経済成長率は同+4.3%と0.1%pt引き上げられた。世界経済が11年以降に4~5%成長へ回帰するとの見方が強まってくれば、将来的に生産が需要増に対応できないとの懸念が高まってくるだろう。

中長期的に見れば、新興国での人口増や経済成長を背景に、コモディティ需要は増加していく見通しである。例えば、景気の底打ちを背景に、09年10-12月期の宝飾品需要は前年比27%増加した。金の期中平均価格は1,099ドルと前年同期から約4割上昇し、日本の投資家は換金売りに走ったが、インドや中国では金の純投資額が着実に積み増されている。「ドル安」不安を反映し、中国やロシア、インドなど新興国は、より一層金準備を積み増していくだろう。

高きから低きへ流れ落ちる水を押しとどめることが困難なように、需給逼迫観測を背景にコモディティ市場へ流入する投資マネーを人為的に抑制することも困難と思われる。コモディティ相場は、年央あたりから再び上昇基調を辿る公算が大きい。
宝飾品需要と金投資
金の宝飾品(2009年10-12月期)/金の純投資(2009年10-12月期)
出所:WGCなどよりDIR作成
注:「その他湾岸諸国」は「中東」からサウジアラビア、エジプト、UAEを除く

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