民営化が進む港湾埠頭公社

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2010年02月22日

  • 米川 誠
港湾埠頭公社の民営化の流れが加速している。平成20年4月に東京港埠頭公社が民営化し東京港埠頭(株)になったほか、平成23年には大阪港埠頭公社が民営化を予定している。また神戸港と名古屋港も平成23年中の民営化を検討しているほか、横浜港においても検討が加速化している(※1)

このような港湾公社の民営化が加速している大きな背景として、アジア諸港の躍進による日本の港湾の相対的地位の低下が上げられる。アジアにおける経済発展や海外主要港の大規模投資による規模・サービス水準の向上を背景に、基幹航路における日本発着の貨物のシェアは大きく低下しており、基幹航路の日本への寄港数が減少している。これはアジア諸国の経済発展により上海港などでの取扱貨物が増加しているといった構造的な理由が挙げられるが、それ以外にも日本の港は他国の港湾に比べて高コストであり、例えば北米から新潟へ貨物を輸入する場合は、東京港で陸揚げして陸上を運ぶよりも、いったん釜山港でコンテナを積み替えて、新潟港に運んだほうがコストが安いといった事情も基幹航路の日本への寄港減少の大きな要因となっている。

このため、政府は日本の港湾の国際競争力の強化と利用者サービスの向上を図るため、平成18年に「特定外貿埠頭の管理運営に関する法律」を制定し、全国の港湾埠頭公社の民営化を促すこととなった。当初、民営化を表明したのは東京港のみであったが、ここにきて民営化を表明する公社が相次いでいるのは、政府が今年6月をめどに国際コンテナ港の重点整備先を1、2箇所に絞り込む方針を掲げたことが影響していると思われる。政府は重点整備する「国際コンテナ戦略港湾」の選定基準として「民の視点からの効率的な経営が可能であること」をあげており、前原国土交通相も港湾の選定に当たっては港湾管理者が民間資金を活用した整備計画を策定するかどうかを考慮する考えを示している(※2)

 一足先に民営化を果たした東京港埠頭(株)は平成21年には(株)ゆりかもめや(株)東京ビックサイトなどを統括する持株会社の東京臨海ホールディングスの傘下に加わり、グループ内の密接な連携により効率的な経営を進め、国際競争力強化を実現することを目指している。また隣接する川崎港と横浜港とも連携を強化し、将来は3港を一体的に管理する組織の設立を視野に入れた取組を進めている。

このような取組は効率的な港湾管理を進めていくことにおいて、非常に有効であろう。今後は整備港湾の選択と集中に加え、既存施設をいかに効率的に運用するかが重要になる。日本の港湾が生き残るため、全国の港湾に民の視点による効率的な経営が広まることを期待したい。

(※1)国土交通省「スーパー中枢港湾政策の総括と国際コンテナ戦略港湾の目指すべき姿」(2010年2月)
(※2)日本経済新聞2010年2月15日朝刊3面

 

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