これからの日本のグローバル市場戦略

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2010年02月16日

  • 加藤 三朋
ポスト新自由主義における日本の大きな課題の一つはこれから日本経済が拠って立つ成長戦略をどう描き、それをどう具体化するかという点である。

戦後の日本経済を振り返ると、今日の経済大国としての日本の地位が必ずしも独自の国家戦略に基づくものでないことがわかる。グローバル市場経済システムの外延化の流れの中で世界の再構築が急速に進む90年代以降も、自民党政権下の日本が国家戦略を主導してきたとはいいがたい。この間の規制緩和、民営化などの政策転換は実態としてはその多くが新自由主義的理念の拡大を標榜する米国の意向を反映したものにすぎなかった。

今にしてみれば日本の「独自戦略なき戦略」が生んだ弊害は小さくない。特に世界経済の仕組みが激変する90年代以降に固有の国益に沿って国家戦略を打ち出せなかったことが、バブル崩壊後から今日に至る日本経済の長期低迷を招く大きな一因だったともいえる。

しかし、今や主体的な国家戦略の構築が日本に必要なことは誰の目からも明らかである。不断の少子高齢化、持続可能性を喪失しつつある国家財政、加えて、今回の米国バブル崩壊に伴い米国依存の経済成長モデルも抜本的見直しを迫られる状況にある。

国家戦略の構築の課題が決して簡単なものではないことは、民主党への歴史的政権交代から半年が経過した今も戦略の具体像がみえてこない点にあらわれている。しかし、それに正面から取り組まない限り、その先には衰退した日本の姿しか浮かんでこないこともまた現実であろう。

米国バブル崩壊の影響が長期化するに伴い世界では、中国などの限られた成長地域をどのように戦略的に取り組むかが大きな課題として浮上している。アジアを中心とする今後の国家・企業間の激しいグローバル競争を果たして日本は勝ち抜くことができるのだろうか。既に日本と中国の間では自律的な企業活動をベースに様々なネットワークが構築されているが、対中国戦略は果たしてそれで充分なのか。一方、「国の役割」は戦略的にどうあるべきなのか。その先には自民党時代の官民の関係を乗り越えた、新たなPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)の戦略的なあり方が検討されることも必要になってくるであろう。

リーマンショック後の世界は、ポスト新自由主義における市場経済のあり方や新たな規制・ルールを模索する段階に入っている。こうした過去四半世紀以上にわたった政治・経済パラダイムの諸変化にも留意しながら、日本には様々な経営資源や戦略的要素を戦略的に結びつけ、それをこれからの成長の源泉として具体化してゆくことが求められている。

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