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中国の環境ビジネスチャンス

2010年02月08日

三橋 忠

改革開放30周年を迎えた中国は、驚異的な経済発展を遂げ、世界で最も注目される市場に成長した。しかし経済効率一辺倒で走り続け、環境保全・保護がなおざりにされたため、近年は様々な環境問題、例えば、松花江の大規模な汚水流出事件、太湖周辺における藻の多量発生、多くの河川における水質汚染、洪水・カンバツの頻発、大気汚染、都市環境の悪化などが相次いで表面化、足元では環境への対応無しに経済の持続的発展は不可能という意識が急速に浸透している。

こうした流れを背景に、中国政府は環境を国家戦略の重要テーマの1つとして位置づけ、環境保全、省エネルギー化、再生可能エネルギーの活用などに係わる法制度を整備、同時に対応する産業構造改革を強力に推進している。直近では、COP15(第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議)の合意に基づき、国内総生産における単位当たりの二酸化炭素(CO2)排出量を2020年までに05年比40~45%削減する方針(絶対量の削減ではなく、エネルギー利用効率の改善)を打ち出している。中央政府は目標を達成すべく、各地方政府に対してエネルギー利用効率の改善をノルマとして配分すると考えられている。

この他現在、天津市をはじめとして中国各地でエコシティーの建設・計画が進められており、環境負荷の小さい都市づくりが急速に展開されようとしている。特に注目されるのは、日本と大きく異なり、これら建設・計画が既存の街を官民協働によりエコ化を図るものではなく、新規に開発する地域を最初からエコシティー化することを念頭に置いている点だろう。したがって、中国のエコシティーは大規模なインフラ整備から開始され、エコに係わるハードの設備投資について大きな需要が期待できる。具体的には省エネビル、省エネ住宅、再生可能エネルギー発電施設、再利用型ゴミ処理施設、省エネ型交通手段の導入、省エネ型各種素材など多種多様で、加えて、最新技術の導入を図るべくCDM(クリーン開発メカニズム)を活用して外国企業の支援を受け入れようとする動きもあるようだ。ただ、このようなハード面の設備投資では、受注を巡る価格競争が激しく、且つ、開発主体となる地方政府との関係が大きくものを言うため、外国企業が中国企業に伍して勝ち残っていくのは容易でないのも事実である。

エコシティー開発に関しては、これまでの地域開発の延長で地方政府主導のハコ物開発と捉えるイメージも強いが、必ずしもハード面ばかりが求められるわけではないことも重要な視点である。個人的には、従来型のニュータウン開発とエコシティー開発の大きな違いは、その地域に係わる行政、企業、住民が環境に対し高い意識を持ち、それぞれの立場で全体の環境保全に主体的に取り組めるソフト面の整備が重要で、ハード整備はそのための基盤に過ぎないと考えている。

こうした考え方に立つと、現在中国で展開されようとしているエコシティー計画は、ソフト面の整備という視点が抜け落ちており、そこに日本企業にとって新たなビジネスチャンスがあるように思われる。つまり、ハードの設備投資だけを受注するのではなく、循環型社会システムというソフトを提案しながら、それに付随する設備、管理運営技術、さらにはそれに係わる人材育成などを提供していくことが重要ではないか。例えば、企業や住民の環境保護インセンティブを高めるために、地域的な排出権取引やFIT(固定価格買取制度)を導入し、それに必要なシステムネットワーク、計量機器およびその運営管理業務などをセットで提供することが考えられよう。

無論、このような総合的なソリューション提供型のビジネスは、開発主体である地方政府にその重要性を理解してもらうことが不可欠で、当初の提案段階で相当な負荷が伴うことも想定される。しかし理解が進み一旦市場に参入できれば、中国企業との価格競争に陥ることなく、息の長い継続的なビジネス展開が期待できる。また、その実績を活かして他地域で同様な展開をすることも視野に入ってこよう。中国市場で腰を据えた本格的なビジネスを展開していくには、売切り型の単純なビジネスから脱却を図り、地域密着でリレーション重視、ニーズ創造型のビジネスモデルへ切り替えることが何よりも重要と思われる。

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