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有価証券報告書の総会前提出について

2010年02月03日

金融調査部 主任研究員 横山 淳

2009年12月11日、「連結財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」が公布、施行された。この中には、国際会計基準の取扱い、第三者割当の開示強化、MSCB等の開示強化などと並んで「定時株主総会前の有価証券報告書等の提出の容認」も盛り込まれている。2009年12月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書について適用するとされていることから、そろそろ対応を検討する発行会社もあることだろう。

従来、有価証券報告書には定時株主総会に報告した(承認を受けた)計算書類・事業報告の添付が要求されていた。そのため、有価証券報告書の提出は必然的に総会が終わった後となっていた。加えて、内部統制報告書についても、金融商品取引法上、有価証券報告書と併せて提出しなければならないため、提出は総会終了後となっていた。これは株主・投資者の立場から見れば、例えば、平成X年3月期分の有価証券報告書・内部統制報告書は、平成X年6月の定時株主総会が終わった後に、ようやく眼にすることができるということである。そのため、本来、上場会社の株主・投資者にとって関心が高いと考えられる有価証券報告書や内部統制報告書の内容は、総会での報告・説明の対象とはなりえないという問題が指摘されていた(いわゆる「期ずれ」問題)。

今回の改正は、有価証券報告書に添付する書類について、これから定時株主総会に報告する(承認を受ける)ことを予定する計算書類・事業報告でも構わないとすることで、有価証券報告書・内部統制報告書の総会前の提出を可能としている。もちろん、総会前に有価証券報告書を提出した場合、そこに記載された総会での決議(予定)事項が、最終的には修正・否決される可能性がある。そこで、そのような場合には、臨時報告書を提出することで対応するように求められている。

それでは、今年度からは有価証券報告書・内部統制報告書の総会前提出が一般化するのだろうか?残念ながら、この点は不明である。今回の改正は、総会前の提出を「可能」とするものであって、義務付けるものではない。また、有価証券報告書・内部統制報告書の内容が十分に周知された状態で定時株主総会を迎えようとすれば、総会の前日に提出するのでは意味がなく、少なくとも1~2週間前には提出・公衆縦覧されている必要があるだろう。これには、提出スケジュールの大幅な前倒しが必要となるだろう。しかも、有価証券報告書・内部統制報告を早期提出したとしても、会社法上の計算書類や事業報告の作成義務や送付義務などが免除される訳ではなく、発行会社の事務負担は軽減されない。そのように考えると、実際には、監査手続・実務などとの兼ね合いもあり、初年度から実施する上場会社の数は限られることになるかもしれない。

ただ、今後、監査手続・実務などの対応が進めば、de factoとして有価証券報告書等の総会前提出がスタンダードとなっていくことはあり得るだろう。加えて、筆者が期待したいのは、いわゆる公開会社法の議論である。公開会社法において、上場会社の情報開示制度が金融商品取引法に一本化、即ち、有価証券報告書・内部統制報告書を総会前に提出すれば、会社法上の計算書類・事業報告の作成義務は免除され、例えば、有価証券報告書・内部統制報告書の要旨を株主に送付すればよいことになれば、株主・投資者と発行会社の双方にとってメリットとなるものと思われる。

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金融調査部
主任研究員 横山 淳