中国共産党も所有の魔術を理解した

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2010年01月07日

  • 原田 泰
中国も、最近では森林保護に力を入れているようだ。過去に開拓した農地を林地に戻し、緑を復活させようとしている(退耕還林)。耕地を林に戻すために、山道を閉鎖しているという。また、陝西省(昔の長安に当たる西安を省都とする省)の担当官によると、防砂のために、砂地を競売にかけ、個人に売り渡しているという。これで個人は砂地を林に変えるインセンティブを持ち、実際に林に変わり、「砂は進み、人は退く」から「人は進み、砂は退く」という歴史的な転換を果たしたという。

これを聞いて、18世紀末のイギリスの農学者、アーサー・ヤングの「所有の魔術は砂を化して黄金にする」という言葉を思い出した。農地が自分のものになれば、農民は土壌の管理を適切に行い、農業生産を拡大させる、という意味だ。中国共産党は、生産手段の国有化を止めて、個人に所有させることの効率性を理解したようだ。砂地の所有者は植林を行い、まさに砂を木材という黄金に変えようとている。豊かになった中国で住宅需要が増大し、木材は黄金になるだろう。

砂地がそう簡単に林になるのかと聞くと、もちろん、環境の良い、傾斜度の低いところだという。傾斜度の高いところは、自然林として、人工林にはしない。自然林は伐採をせず、保水と土壌の保全のみを目的としているという。このように、人工林と自然林に分けて対策を講じることは、北欧から学んだという。

日本の林業政策で自然林のままにしておくところと人工林にするところが区別されていない。傾斜度が高いところも、所有者が人工林とすれば、間伐などの手入れに補助金が出る。これでは、補助金で効率の悪い林業を維持しているようなものだ。

中国は私的所有権の生む効率性を理解し、林地の管理を北欧から学んだ。日本の制度や政策がアジア最善のもので、アジアが当然それを学んでくれると思うのは、もはや間違いになっている。

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