新興国市場の開拓に向けたビジネスモデルの改革

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2009年12月24日

  • 柏崎 雅代
12月22日に発表された政府の月例経済報告では、「景気は持ち直している」という基調判断は据え置かれた(5ヶ月連続の据え置き)。しかし一方では、消費者マインドは冷え込んでおり、景気の水準自体は依然として厳しい状態にある。特に足かせとなっているのがデフレ傾向で、足下の大幅な需給ギャップと賃金低下による家計の節約志向が値下げ競争を呼び、家計のデフレ期待を醸成している。これが更なる物価下落や買い控えを通じて、企業収益の先行きに対する不透明感を高めている。

背景には経済のグローバル化による経営環境の構造変化があり、企業経営にとっての万能薬的な解は容易に見つからないが、改めて、二つの方向性からビジネスモデルを検討することで解の手がかりが得られそうである。

1)真に顧客が求めているものは何か
景気改善により消費者の不安は払拭される可能性はあるものの、少子高齢化や環境意識の高まりといったトレンドにより、国内市場の楽観的な拡大は期待しにくい。成長のための新たな市場として、新興国市場の開拓が必要となる。その際、国内市場(あるいは先進国市場)の仕様を前提とせず、当該市場の顧客に向き合い、真に求められているものは何かを入念に構想し、品質・付加価値・価格の面で顧客に受け容れられるものを作り出すことがカギとなろう。既に、画像センサーの機能を抑えた100ドル以下のデジタルカメラ、現地の生活習慣に合わせて独特の感触をもたせた洗剤など、市場開拓に成功した事例がみられる。

2)営業改革や業務効率化に向けて何に着手するか
競争力を備えた「もの作り」は、生産現場の活動だけで達成することは難しい。営業改革や業務効率化と密接に関係しており、これらが一体となって構想・改革されてこそ、効果を挙げることができる。右肩上がりが想定された時期には手付かずだった重要課題やリスクについて、新政権による「事業仕分け」さながら、あぶり出しを行い対策に着手することが求められる。

この二つの方向性では、まずは現状についてのディスカッションが出発点となろう。どのような価値を提供すれば顧客に受け容れられるのか、価値を提供するにはどのような方法が効果的なのか、決して簡単な問いではないが、ビジネスモデル改革に向けた挑戦に対し、グローバル競争の時代を勝ち抜く企業の伴走者として、洞察力と構想力、実行力をもって弊社もぜひ役立ちたいと考えている。

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