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ジョブレス・リカバリーの先にある為替変化

2009年12月15日

亀岡 裕次

2009年はドル安が進行し、主要通貨の中で「ドル最弱の年」となった。その原因は主にリスク選好と米金利低下の二つにある。世界的に経済が底打ちして回復軌道に入ったことが、市場のリスク選好を高めて高金利通貨買いを促す一方、基軸通貨かつ低金利通貨のドルに売り圧力をもたらした。しかも、米国では雇用減を背景に、FRBの低金利政策が当初予想よりも長期化するとの観測が強まった。金融市場安定化に伴う信用リスク低下と相まって、市場金利が他国以上に低下することとなり、ドル安圧力をより一層強める結果となった。

つまりは、ジョブレス・リカバリーの下でのリスク選好と米金利低下がドル安を招いたわけだが、こうした状況がいつまでも続くとは考えにくい。景気回復の初期に雇用が減ることはあっても、景気回復がある程度進展すると、雇用は増加に転じやすいからである。実際、米国では2009年7-9月期にプラス成長に転じ、11月には雇用減少幅が大きく鈍化した。米政府による経済対策の効果は今後も持続すると見込まれるうえ、株高(資産効果)、金利低下、ドル安はいずれも米国景気にプラス効果をもたらす要因だ。2010年の早期に雇用が増加に転じる可能性が高いだろう。また、すでに上昇しているインフレ期待が警戒すべき水準まで一段と高まる可能性もある。FRBは異例の低金利を「長期にわたり」維持するとの緩和姿勢を数ヶ月以内に弱め、その時点で米金利とドル相場は反発することになろう。

いま一度、過去の為替変動パターンを思い起こすべきだろう。02年から03年6月にかけて、米国ではジョブレス・リカバリーの下で利下げが行われ、その後も「かなりの期間、政策を維持する」とのFRBの緩和姿勢を受けてドル安が続いた。ただ、03年9月から雇用は増加基調に転じ、インフレ期待の水準も上がり、04年1月には「政策変更に忍耐強くなれる」と緩和姿勢を弱めた。すると、ドル相場は反発し、米本国投資法(HIA)施行前の04年10-12月に一時的なドル安はあったものの、07年6月までドル円は上昇基調を続けた。要するに、FRBの金融引き締め方向への姿勢変化がドル買いを生む一方で、低金利政策の続く円を調達通貨とする円キャリー取引が拡大し始めて、円が売られていったわけである。

今回は、家計の貯蓄率上昇や銀行の貸し渋りが米国経済の回復を抑制しているので、金利も上昇しにくいという面はある。だが、それに対応してFRBが金融機関からMBSなどの長期性資産を買い取るかわりに市場に供給した資金が、金余り要因となって資産価格を押し上げる方向に作用している。量的(信用)緩和のプラス効果は軽視できない。反面、FRBはバランスシートを急には縮小させにくいが、リバース・レポやターム・デポジット・ファシリティなどを導入して資金吸収ができるし、準備預金などの金利を引き上げることで金融引き締めを図ることも可能だ。2010年は「米金利とドルの反発の年」になるだろう。

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