COP15開幕 ~気候変動と資金

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2009年12月07日

  • 物江 陽子
12月7日、コペンハーゲンでCOP15(第十五回気候変動枠組み条約締約国会議)が開幕する。COP15は、気候変動に関する2013年以降の枠組みの合意期限だが、交渉は難航しており、大方の見方の通り、新しい法的文書の採択は困難と思われる。削減目標や途上国の排出削減、途上国への技術移転、資金など、主要な議題での政治合意がポイントになる。

議題のひとつが「資金」である。当然ながら気候変動対策には多額の資金が必要になる。国連は、2030年に官民で年間22兆~34兆円の追加投資が必要になると試算している(※1)。内訳は、温室効果ガスの排出削減(緩和)に18兆~19兆円、気候変動による被害防止(適応)に4兆~15兆円。具体的には、インフラ建設、交通分野における省エネやバイオ燃料への転換、技術開発、建物の省エネ、産業部門の省エネなどに資金が必要になる(図表)。逆に言えば、必要な資金が確保されれば、こうした部門には資金流入が見込めることになる。

なかでも経済成長とともに温室効果ガス排出量増加が予想される新興国、そして気候変動の被害が及びやすい途上国では巨額の資金需要が見込まれる。このため国際交渉では、途上国は先進国にさらなる資金拠出を求め、それだけの資金を出す余裕のない先進国との間で調整が難航している。現状でも国連の下にはいくつかの資金スキームがあるが、資金ストックは2008年時点で230億円程度(※1)。この金額には二国間の公的資金や民間資金は含まれていないが、上述の必要な投資額とは大きなギャップがあるのが現実だ。

一方、気候変動対策が実施されなければ、長期的には、飲料水や食糧生産、健康などへの影響を通して、世界経済に大きな被害が及ぶ可能性がある。英国財務省委託調査、通称スターン・レビューは、対策を講じない場合の被害は世界のGDPの5~20%に及ぶとしている(ただし、被害が及ぶのは今世紀後半から、という非常に長期的な話ではある)(※2)

気候変動対策では、長期的な視点からとるべき行動と、実際にとれる行動との間に非常に大きな乖離がある。難航する交渉を見ながら、国連気候変動枠組み条約事務局長のデブア氏は、当面先進国に年100億ドル(約8,800億円)の拠出を求めている。必要投資額からすれば少額だが、これまでの資金ストックからは大幅な増額である。COP15でまずはこの額が合意文書に盛り込まれるかが焦点となる。会議の進展に注目したい。

(※1)国連気候変動枠組み条約事務局『気候変動に必要な投資と資金フロー』(2008)
(※2)ニコラス・スターン『スターン・レビュー:気候変動の経済学』(2006)
(※3)為替レートは88.2円/ドル(2009年12月4日時点)で換算

気候変動対策に必要な追加投資額(2030年/年間)
気候変動対策に必要な追加投資額(2030年/年間)
(出所)国連気候変動枠組み条約事務局『気候変動に必要な投資と資金フロー』(2008)より大和総研作成

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