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医療現場の実態に見合わない診療報酬

2009年11月25日

齋藤 哲史

 先日、友人から医療費の自己負担について相談を受けた。ご母堂が大腿骨骨折により急性期病院にて療養中であるが、今後は機能回復を図るため、リハビリ病院に転院しなければならないとのことである。そこで転院先から治療内容、費用等についての説明を受けたのだが、その際に1ヶ月の総負担額が20万円になると言われたらしく、「こんなに多額の費用がかかるものなのか」というのがその内容である。

友人が驚いたのも無理はない。このうち13万円強が保険外負担で、それもおむつ代や寝巻き代、洗濯代等が大半を占めていたからだ。少しでも負担を減らそうと、友人はおむつ等の持込みを希望したが、病院側は「無理です」との1点張りで、拒否すれば当院に入院できないとまで言われたらしい。

他の医療機関を探すという選択肢もあるが、首都圏にはリハビリ病床が少ないため、現状では他施設への転院は困難だろう。気の毒だが、この条件を受け入れざるを得ないのが実情なのだ。

しかし皆保険の日本で、なぜこのような理不尽なことがまかり通っているのだろうか。実は、こうしたケースは、この病院だけに限った話ではない。実際のところ、多くのリハビリ病院が、金額の多寡は別として、こうした保険外負担を患者に求めているのだ。医療の公定価格である診療報酬(※1)が、経済合理的に設定されていないためである。

そもそも、診療報酬の設定が適切であれば、このような保険外負担は不要であろう。それにもかかわらず、別名義で請求を行うのは、診療報酬でコストを賄えないからに他ならない。平成17年9月に厚生労働省が出した通知(※2)により、おむつ代、病衣貸与料等の実費に関して徴収が認められることになったが、実際には、実費に別料金を加算するケースが多いという。しかも、こうしたケースに対して、当局によるチェックはほとんど行われていない。診療報酬が適切であれば、この通知は必要ないし、ルールを守らない医療機関に対して毅然とした対応ができるはずであろう。

行政刷新会議の第2ワーキンググループが、「医師確保、救急・周産期対策の補助金等」について事業仕分け作業を行い、来年度予算概算要求(約574億円)の半額を計上する、と結論付けた。病院の収入確保は、診療報酬で対応すべき、ということなのだそうだ。言っていることは正論だが、それならば診療報酬の設定や決定プロセスを再検証し、実態に見合わない報酬(※3)については、早急に見直しをするよう提言すべきではないだろうか。ツケを患者に回さないためにも。

(※1)内閣府のホームページに『公共料金の窓』というサイトがある。ここには電気料金や水道料金など、公共料金の仕組みや決まり方が詳細に掲載されているが、診療報酬については簡単な記載のみである。「なぜ虫垂切除術が6,210点なのか」、「診療所の初診料が274点なのに病院の初診料が255点である理由」等の説明は一切ない。内閣府でさえ、診療報酬の決定方法を知ることができないということである。
(※2)『療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて』(保医発第0901002号 平成17年9月1日 一部改正平成17年10月1日)。
(※3)診療報酬が不合理なのは医療関係者の間では常識となっている。物価や人件費等が異なるのに価格が全国一律であること、診療科の力関係で配分が決められていること、病院の待ち時間を減らすには、病院>診療所となる価格にしなければならないのに、その逆をしていること、無意味な指導料が多すぎること等、この他にも疑問符がつくような設定が数多く見られる。

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