グラム・リーチ・ブライリー法再考

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2009年11月16日

  • 木村 浩一
バブル崩壊後の日本経済の不振の長期化は、銀行に日本経済のリスクが集中したことがその大きな要因であった。個人金融資産の半分が預貯金に集中し、企業も資金調達を銀行融資に依存していた。

今回の金融危機の発生源のアメリカの場合、個人金融資産に占める現預金の割合は12%(2007年末)にすぎず、資本市場が企業の資金調達の主流となっている。そのアメリカで、なぜ金融危機が起きたのだろうか。投資銀行が高レバレッジでリスクをとっていたことに加え、実際にはアメリカのメガ・バンクに資本市場のリスクが集中していたからではないか。

アメリカは、大恐慌後、グラス・スティーガル法(1933年)を制定し、証券業務と銀行業務を分離したが、1999年にグラム・リーチ・ブライリー法により銀行に証券業務参入を認めた。

銀行は、証券業務に加え、簿外でもシャドウ・バンキングにより証券化商品に大量に投資し、リスクを抱えこんでいた。このように、規制緩和により、銀行は資本市場のリスクをも抱えることになり、過度に証券業務に進出していったシティ等は大きな打撃を受けることになった。

アメリカの財務省の金融規制改革案では、銀行に対する規制については、財務規制のみで業務規制は提案されていない。アメリカ政府は、アメリカ経済の国際競争力を考えると、今後も金融で稼いでいくしかないと考えているのかもしれない。

しかし、金融危機の再発を防ぐには、メガ・バンクに金融市場、資本市場のリスクが集中しないようにすべきである。そのため、グラム・リーチ・ブライリー法を見直し、銀行による証券業務を制限するとともに、シャドウ・バンキングを制限するため、銀行の総資産を預金量の一定限度にとどめるように規制をかけるべきではないだろうか。

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