リバイバル・リメイクに見るマーケティングの重要性

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2009年11月11日

  • 櫻岡 崇
新商品の動向を見ると、以前にブーム化したヒット商品やコンテンツ作品をリバイバル・リメイク化して再びヒットに結びつけるケースはよく目にする。

たとえば、今年は小学生の間でタカラトミー社の「ベイブレード」が流行している。これは1999年に発売され国内で2002年に最盛期を迎えた次世代ベーゴマのリバイバル商品である。そもそも、最初の展開期でもコンセプトはベーゴマのリメイクであった。玩具の場合、個別商品のリバイバルは上記事例以外にも「たまごっち」など同様にヒットから数年おいて行われる事が多い。

一方、テレビ局の番組制作でも過去にドラマ化や映画化された作品のリメイクはしばしば行われる。今10月-12月期でも、フジテレビが開局50周年記念として制作した「不毛地帯」を、TBSが「小公女セイラ」を放送している。しかし今のところ、制作費、原作、キャストなどから見た各局の力の入れ具合とは裏腹に、視聴率は成功水準とはいかないようである。これら作品の価値が視聴率だけで決まらないのは言うまでもないが、放送ビジネスとしてはマーケティングに問題があったと見られる。

玩具であっても映像作品であっても、過去に一定の需要があったものをリバイバル・リメイクし、成功させるにはマーケティングが重要である。つまり、過去の商品力と外部環境を現在に置き換え、基本的な需要が期待できるか、改良を施す必要がある点はどこか、などを調査・分析し、企画・開発・広告・販促に至るまで入念に検討する必要がある。これは、過去に失敗した商品・コンテンツなどのリバイバル・リメイクでも同様である。

上記のような特定の商品やコンテンツではなく、テクノロジーや用途カテゴリなどの要素で見たリバイバルとして拡大解釈すると、IT業界の商品・サービスでもこうした事例は多くある。

たとえば、iPhoneは携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)のリバイバル商品と見ることができる。iPhoneのコンセプトは、1996年に発売された米Palm社のPDAが掲げたそれとほとんど違わないとの見方に同意される方も少なくないだろう。

2001年にPDAの流行がピークとなったのと入れ替わりで公衆無線LANへの期待が高まったのは記憶に新しい。当該インフラは、ビジネスモバイルPC向けという手堅いニッチな用途はあった。しかし、広範なコンシューマー向けに関しては、PDA市場の縮小によりインフラ整備すれども利用端末あらずの状況となり、徐々に事業者、エンドユーザーともに公衆無線LANへの期待は萎んだ。

通信インフラとPDAを一体で提供するのがスマートフォンというカテゴリになった。そしてマーケティング巧者である米Apple社のiPhoneは、その第1段階における勝者の座を手に入れつつある。もっとも、今後はモバイル通信における端末やプラットフォームの覇権をめぐって、競争が激化するだろう。

日本のモバイル通信インフラは、世界的に見てもブロードバンド化の先頭に立つと期待される。当該分野の商品・サービスで今後起こることは、まさに固定ブロードバンドのリバイバルとなる面がある。日本企業が世界をリードする事業基盤を構築できるかは、そのマーケティング力が問われることになろう。

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