内外経済と株式市場のポイント

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2009年11月04日

  • 野間口 毅
10/14に発表された中国9月の貿易統計では、輸出・輸入とも前年比のマイナス幅が8月に比べて大幅に縮小した。同じく10/14に発表された米9月の小売売上は政府の自動車買い替え支援策が終了した影響で前月比▲1.5%と昨年12月以来の大幅なマイナスとなったが、自動車を除く売上は+0.5%と2カ月連続増加し、市場予想の+0.2%を上回った。大和総研経済調査部の熊谷シニアエコノミストによると世界経済には大局的に「米小売売上増加→中国の輸出増→中国の輸入増」という因果関係が存在するという。中国で9月の貿易統計が発表され、米国で9月の小売売上が発表された翌日の10/15には中国商務省の報道官が、世界の需要は回復しつつあり、中国の輸出は10~12月期に拡大する可能性があると指摘した。世界経済は好循環を回復した可能性があると考えられよう。

一方、10月下旬にかけて内外の株価が反落した起点がMSCI新興国株価指数やNYダウが年初来高値を付けた10/19だとすれば、そのきっかけは同日ブラジル政府が金融取引税の対象を株式などにも広げて課税を再開すると発表したことだろう。10/26の米国市場では、米英の有力メディアが「米FRBは超低金利政策の長期化を示唆してきたFOMC後の声明の変更を検討している」と報じたことを受けて10年国債利回りが2カ月ぶりの水準まで上昇する場面があった。また、10/27にはインド準備銀行が金融政策を緩和から引き締め方向に転換すると決め、翌10/28にはノルウェー中央銀行が金融危機後の欧州では初めて政策金利を引き上げた。内外の株価は各国の「出口戦略」を織り込む局面にあるとも考えられよう。

ノルウェーが政策金利を引き上げたことについて、同国は世界有数の石油輸出国であることから、10/6にG20では金融危機後初めて政策金利を引き上げた豪州とともに「資源が豊富で財政に余裕がある国の回復ぶりを改めて鮮明にした」と指摘された。その豪州は11/3に0.25%の追加利上げに踏み切った。また、11/4に発表される米FOMC声明文では、(前段で記したように)これまで超低金利政策の長期化を示唆してきた表現に変更が加えられるか否かが注目される。ただし、ブラジルが金融取引課税を再開したことやインドが金融政策を引き締め方向に転換すると決めたことに比べれば、事前に想定されている分だけ、豪州の追加利上げや米FOMC声明文の変更が為替市場や株式市場に及ぼす影響は限定的だろう。

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