企業グループのコーポレート・ガバナンスと企業結合・企業集団法制~東証「実行計画2009」を受けて~
2009年10月21日
2009年9月29日、東証は「上場制度整備の実行計画2009」(以下、「実行計画2009」)を発表した。これは今年6月の金融庁金融審議会スタディグループ報告や経産省企業統治研究会報告書などの提言を踏まえたものである。この中には、例えば、一般株主と利益相反が生じるおそれがない「独立役員」の選任など、わが国の上場会社のコーポレート・ガバナンス上、重要な内容が盛り込まれている。もちろん、どの項目も重要ではあるが、今回取り上げたいのは「上場会社のグループ化への対応」という項目である。具体的には、東証は次の対応を「速やかに実施する」としている。
(1)コーポレート・ガバナンス原則の見直し(企業グループ全体としてのコーポレート・ガバナンスの実現)
(2)中核子会社の重要事項について、子会社経営陣の見解の開示
例えば、いわゆる純粋持株会社を考えた場合、親会社(=持株会社)単体のガバナンスのみに着目することに余り意味はなく、企業グループ全体としてのガバナンスに着目する(1)の考え方が整合的であろう。また、実際の事業運営等の判断は中核子会社の経営陣が行っているものと考えられることを踏まえれば、親会社株主に対する情報開示・説明責任のあり方としては、子会社経営陣に説明責任を求める(2)は必要な対応であろう。
連結ベースという考え方は、何も会計・開示の分野に限定されるものではなく、ガバナンスにおいても妥当すると考えられる。その意味では、東証のこれらの方針は正当なものであるといえるだろう。
加えて、企業グループ全体としてのガバナンスを考えた場合、いわゆる子会社上場(親子上場)問題も避けて通ることはできない。実際、「実行計画2009」でも、親会社などの出身ではない社外役員選任などガバナンス面からの利益相反防止、親会社による権限濫用防止のための措置が検討されることとなる。加えて、子会社上場そのもののあり方についても改めて検討されることとなる。
「実行計画2009」が取り上げる企業グループ化への対応は以上の2点だが、金融庁金融審スタディグループ報告は、このほかにも「いわゆる企業集団法制の整備」を提言していた。民主党政権は、政策の一つとしていわゆる「公開会社法」を掲げており(民主党政策集INDEX2009)、その中でも企業結合・企業集団法制に関する議論は避けられないものと考えられる。その際、議論となり得るテーマは思いつくものだけでも、二段階代表訴訟(親会社株主による子会社取締役に対する代表訴訟)、子会社株主・債権者による親会社・親会社役員に対する損害賠償請求等、重要な子会社の財務諸表の開示などが挙げられる。議論の進展によっては、取引所としても更なる対応が必要になることが予想されるだろう。
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