大胆な意識変革で未来への活路を

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2009年10月14日

  • 佐藤 清一郎
いつの頃からか、介護や少子化、婚活など、1980年代後半のバブル以前に社会人となった人間にとっては、あまりなじみのない言葉を、テレビや新聞で目にすることが多くなった。だいぶ慣れたとはいえ、昔の人間としては、こうした現実に若干の戸惑いを感じる。何故なら、昔は、この種の問題は、あくまでも個人的なもので、あえてマスコミなどを通じて、社会に流すようなものではなかったからだ。しかし今は逆に、時折、介護疲れによる悲惨な出来事が報道されることからもわかるように、この種の問題は、積極的に世間の目にふれるようにしなければ、問題が深刻化してしまうリスクさえある。こうした現実を前に、この種の問題は、あくまでプライベートと考えつつも、一方で、社会問題として扱う必要があると、考えを改めている人も多くなっているかもしれない。

時代とともに、人々のライフスタイルは、確実に変化する。こうした社会的変化の背景は何か。貧しかった時代、豊かさを求めて努力すれば、その先は、明るい未来が待っていたはずではなかったのか。しかし、前述のような問題は、ある意味、豊かさとは縁遠く、むしろ、苦痛ともとれるものである。何故、このようになってしまったのか。冷静に考えれば、豊かさは、その段階、段階で、世の中を変貌させ、少子・高齢化や未婚化の原因となるものをもたらしてきた。生活環境や医療技術改善で長生きできるようになったこと、コンビニなどができ、一人でも不便を感じなく生活できるようになったこと、娯楽も多くなり、それなりの時間つぶしができるようになったこと等、例を挙げればきりが無い。

いずれにせよ、今後の世の中では、介護、少子化、婚活などに真剣に向き合うことが、大切なことである。この種の問題が存在しなかったか、もしくは、軽視されてきた昔とは大違いである。状況改善のため何が必要であろうか。結論としては、仕事に対する人々の大胆すぎるくらいの意識変化である。すなわち、婚活、介護、育児といったことに関し、それを仕事と認め、かつ、その重要度を認識することである。認識変化に伴い、社会のインフラ整備の優先順位も変わってくるだろう。

日本ではこれまで、経済成長に直結することや会社関係は大事にしてきた一方で、介護や育児、更に言えば、家庭や地域など、経済成長には直接関係ないものは軽視、もしくは犠牲にしてきた感がある。過去の高度成長時代には、経済成長に直接寄与することが、まさに仕事として重要だったが、相当程度の成長を達成した今、その考えも修正していく必要がある。これまで軽視されがちだった分野に、より目を向けていくことが重要である。介護、育児などは、仕事に直結するものと異なり、ある意味、生産性になじまない部分も多く、日本人にとって、従来の仕事以上に大きな負担となってくる可能性もある。この意味でも、仕事に対する意識変化、実効性ある介護・育児休暇制度は不可欠である。この実現には、現状より、企業に負担を強いる可能性が高いが、制度充実の先には、経済や社会の安定が期待され、結果として、企業にもプラスになると思われる。

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