「レッドクリフ」型の開発戦略に期待

RSS

2009年10月08日

  • 岡村 公司
日本や中国などで大ヒットを遂げたアクション映画「レッドクリフ」は、ハリウッドでも実績のあるジョン・ウー監督の下に、中国、香港、台湾、日本から有力な俳優が集結して制作された。東アジア諸国を強く意識した制作方針であり、米国から世界市場を目指すハリウッド映画とは大きく異なる戦略と言える。

新製品の研究開発や新サービスの事業開発でも、同様の国際戦略が想定される。明治維新以降、日本は欧米中心の市場戦略を進めてきたが、近年中国が経済的に発展してきたことによって、韓国や台湾などを含めた東アジアだけでも十分な市場性が確保できる状況ができつつある。

東アジア諸国に共通する課題にテーマを設定することが重要になる。例えば、環境・エネルギー分野が有力な候補となる。各国とも原油を輸入に依存しており、新エネルギーの開発やエコカーの研究などは重要性の高い共通テーマである。バイオマス燃料でも、東アジア地域に合った資源開発を広域で展開することが考えられる。

鉄道網を中心とした交通ネットワークも有力候補と言える。多くの人口のモビリティ(移動しやすさ)を高めると同時に低炭素社会を推進するには、化石燃料を直接の燃料としない鉄道の整備が有効になる。新幹線や大都市圏の鉄道網を整備してきた日本の実績を活かせる分野でもある。

また、少子高齢化対策も共通テーマになりえる。社会学的な対策も重要だが、生活習慣病の予防・治療や介護支援ロボットの開発などの科学技術的な課題解決が欠かせない。少子高齢化先進国の日本で開発される次世代技術や新サービスが広く活用されることが望まれる。

一方、輸出入や企業進出に関る法規制、知的財産権の確保、経済水準の違い、パートナー企業との連携など、国際戦略の障害となりうる要因もある。事前に障害要因の対策を検討し、最適なテーマ設定とチーム編成を行えれば、レッドクリフのような成功を収めることも十分に可能だろう。

エンターテイメント業界では、レッドクリフの成功を受けて、東アジア向け作品の制作が増えると推測される。製造業を含めた他の産業においても、東アジア向け市場の開発戦略が活発に展開されることに期待したい。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。