環境で成長できるか

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2009年10月01日

  • 原田 泰
民主党政権は、2020年度までの二酸化炭素排出量削減目標について、自民党政権が打ち出していた1990年比8%削減に代わって、1990年比25%という野心的な目標を打ち出した。これが経済界、ひいては国民の負担になるという反対意見が出ているが、同時に、環境規制で、環境産業を中心として経済が発展するという意見もある。しかし、環境規制によって経済が発展するということがあるだろうか。

二酸化炭素は地球温暖化と関係がないという議論があることは知っているが、これについては議論しないことにする。二酸化炭素の排出量を抑えることによって地球温暖化が止まり、旱魃や洪水の危険を避けられるとしておこう。しかし、二酸化炭素の排出量を抑えることと、二酸化硫黄や二酸化窒素の排出を抑えることとは異なる。二酸化硫黄や二酸化窒素の排出を抑えることは、狭い意味での経済を発展させなくても、必ず私たちの生活水準を向上させる。環境規制でコストがかかっても、きれいな大気の中に住むことは、私たちの幸福度を高める。しかし、日本だけが二酸化炭素の排出量を抑えても、他の国が抑えなければ気候変動を抑える効果がない。

確かに、規制によってある産業は伸びる。二酸化炭素の排出が規制されれば、二酸化炭素を出さない技術の価値が高まり、その技術を持っている企業は発展する。しかし、だからと言って経済全体が発展する訳ではない。二酸化炭素を抑制することにはコストがかかり、その分だけ、社会全体は貧しくなる。それで得られるものは、二酸化硫黄や二酸化窒素を抑制することによって必ず得られるきれいな大気ではなくて、日本が二酸化炭素の排出量を抑えたという自己満足だけかもしれない。

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