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為替を左右する全体観と個別観

2009年09月08日

亀岡 裕次

為替相場の決定要因には大きく二つに分けて、全体観と個別観(あるいは相対観)がある。全体観とは、世界経済や金融市場が改善しそうだとか、悪化しそうだとかといったことだ。経済情勢が改善方向の場合、投資家はリスクをとりやすくなり、債券を売ったり(=長期金利が上昇したり)、株や商品を買ったりする動きが広がりやすい。為替市場では、低金利の円や基軸通貨のドルが売られやすくなる一方で、比較的金利の高い新興国や資源国の通貨が買われやすくなる。なぜなら、(1)世界的に景気が回復する局面では、先進国に比べて新興国の期待成長率や金利の高さが相対的に維持・拡大されやすい、(2)商品高のメリットを受ける資源国の経済が非資源国に比べて相対的に拡大しやすい、(3)リスク許容度が上昇するために為替リスクを伴っても金利差を利用した低金利通貨売り・高金利通貨買いがしやすくなるからである。経済情勢が悪化方向の場合は、その逆になる。

一方の個別観とは、ある国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が他国に比べて相対的に改善しそうだとか、悪化しそうだとかといったことである。相対的に経済成長率や株価、金利などが上昇しそうな国には、投資機会を求めて世界からマネーが流入して通貨も上昇しやすくなるし、逆にそれらが相対的に低下しそうな国からは、マネーが流出して通貨も下落しやすくなる。また、輸出増加などの前向きな理由によって貿易・経常収支が顕著に改善する国の通貨は買われやすくなり、輸出減少などの後向きな理由によって貿易・経常収支が顕著に悪化する国の通貨は売られやすくなる。

世界経済が安定的に拡大しているような場合には、金融市場のボラティリティーが低位で安定し、全体観が振れにくくなる。そうした状況では、為替市場は個別観に基づいて決まりやすい。ところが、世界経済が不安定になると、金融市場のボラティリティーも不安定化し、全体観が振れやすくなる。そうした状況では、為替市場は全体観に基づいて決まりやすくなる。近年の為替市場はどちらかといえば後者に該当し、従来に比べると全体観が効きやすく、個別観が効きにくくなっている。

今後も全体観が為替相場を左右し、景気回復期待が続くうちはリスク選好のもとで、円やドルが他通貨に対し下落しやすいだろう。むろん、個別観が効かなくなったわけではない。例えば、日本の民主党政権は円高容認・ドル離れ志向との見方が強まれば円高要因になり、米国が他国に先んじて利上げを行うとの見方が広がればドル高要因になろう。さらには、円高が日本経済の悪化懸念を通じて株安・円高の悪循環を招いたり、米金利上昇が他国にも波及して株安を招いたりする可能性もある。一国(地域)の個別観の変化は、世界の全体観を変化させるきっかけにもなりうるだろう。

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