三極化する米国景気指標

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2009年09月02日

  • 成瀬 順也
米国で発表される景気指標が、3つのタイプに分かれつつあるように見える。(1)マイナス幅の縮小が終わりに近付く企業部門、(2)回復の兆しが広がる住宅、(3)回復に陰りが見え始めた個人消費、の3つである。

企業部門はこれまで、米国景気の改善を象徴する指標として、二大ヒーローを抱えていた。ISMと雇用統計である。ISM製造業景況指数は昨年12月の32.9をボトムに、7ヶ月連続で改善。7月には48.9と拡大・縮小の境目である50目前に迫った。雇用統計の非農業雇用者増減数も1月の前月比▲74.1万人をボトムに、7月は▲24.7万人まで改善している。ただし、リーマン・ショック前、ISM指数は50前後に、非農業雇用者増減数は▲10数万人程度に張り付いていた。改善余地は残り僅かかもしれない。企業部門の調整進展により、マイナス幅の縮小は進んだが、±ゼロへの回帰後、成長持続のシナリオは見えないのである。

一方、景気回復を示唆する新たなヒーローにならんとしているのが、住宅市場。戸建て住宅着工件数は7月まで5ヶ月連続で増加し、戸建て住宅販売は新築、中古ともに4ヶ月連続で増加している。戸建て新築住宅在庫が1993年3月以来の水準にまで減少したこと、販売の先行指標となり得る住宅市場指数が昨年6月の水準を回復していること、などから着工、販売の回復は今後も続くと見られる。さらに、注目度の高い住宅価格についても、6月S&Pケース/シラー住宅価格指数(20都市)は前月比+1.4%と、2ヶ月連続のプラスを記録。底打ち反転が近付いているように見える。

しかし、個人消費の回復は足踏み。7月小売売上高は前月比▲0.1%と3ヶ月ぶりのマイナス。特に、変動の激しい自動車を除くと▲0.6%と大幅減。自動車買い替えの奨励策によって自動車販売は伸びたが、他の消費は抑制されてしまったのである。また、先行指標となる8月ミシガン大学消費者信頼感指数(確報)は65.7と、2ヶ月連続の低下。最悪期脱出までは早かったが、それ以上の回復については、期待外れとなりそうである。

今後、米国の景気指標は、(1)企業部門はニュートラルな、(2)住宅はポジティブな、(3)個人消費はネガティブな存在となる可能性が高いだろう。マーケットは一喜一憂すると見られ、今後はこれら3つのうち、どの分野の指標発表が多いのか、マクロ統計の発表スケジュールに注意したい。

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