中国のホワイトボックス携帯電話~山塞機~

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2009年08月25日

  • 杉下 亮太
中国の電機製品市場における特色の一つにホワイトボックス市場の存在が挙げられる。特に携帯電話においてはホワイトボックス製品が需要の相当部分を占めるようになっており、昨年頃からはホワイトボックス携帯電話のことを白牌手機という表現に代わって山塞機という呼び名が定着した。山塞とは、元々は政府の統治が及ばない山で勢力を誇った勢力というような意味のようだ。

山塞機に定まった定義はないものの、馴染みのない名前がついているか、表面にまったく何も書いていないか、海外大手ブランドの携帯電話に似せた機種であることが多い。山塞機の市場規模は把握が難しいが、台湾のMediaTek製ベースバンドIC(チップセット)を採用していることが多いとされ、同社の出荷数量から大雑把な推計は可能である。同社のベースバンドICは大半が中国メーカー向けに出荷されており、これら中国顧客の多くが山塞機メーカーと見られているためである。MediaTekのベースバンドIC出荷数量は05年に推定3300万個から08年は2億個以上に増加した。09年について同社は3億個を超えるとの見通しを明らかにしている。同社のベースバンドICを搭載した携帯電話のうち、4割は中国から新興国に輸出されている模様であることから、2億台弱が中国国内向けとして生産されると概算できる。

山塞機市場がここまで大きくなったのは様々な要因があるだろうが、MediaTekの存在が特に大きいように思われる。同社のICを採用することで、多機能かつ低価格の携帯電話を短期間で容易に設計できるとされ、数百社またはそれ以上の業者が携帯電話の設計に参入したといわれている。たとえば、カメラはもちろん、3インチ前後のタッチパネルやブルートゥース、デュアルSIMカード、MP3/4などがついた携帯電話が数百元(1元は約14円)で売られているケースがある。

山塞製品は携帯電話以外の電機製品にも登場し、一時話題となった。09年の初めには、山塞上網本と呼ばれるネットブックの山塞製品が多数登場した。山塞版液晶テレビの存在がニュースとなったこともある。ただし、山塞ネットブックも山塞液晶テレビもこれまでのところ人気化するには至っていない。部材調達が容易でない場合があることや、携帯電話ほどPCの購入者層のすそ野が広がっていないこと、メーカー側の資金不足などが要因と考えられる。

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