地域経済活性化に寄与する首都圏空港の国際航空機能拡充

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2009年07月15日

  • 米川 誠
2010年は、首都圏空港(成田・羽田)にとって大きな前進となる年である。成田空港はB滑走路の延伸(2500m化)及び関連施設の整備により、2010年3月末をめどに国際線発着回数が年間2万回拡大する。羽田空港は2010年10月末に完成予定の4本目の滑走路の整備に伴い、新たに年間約6万回(昼間時間帯に年間約3万回、深夜早朝時間帯に年間約3万回)の国際定期便を就航させる。これに伴い、成田においては新たにカタール、アラブ首長国連邦、マカオ等への路線が開設されるとともに、既存路線についても輸送力の増強が見込まれ、羽田においても首都圏の国際航空機能を24時間化する観点から成田空港が閉鎖されている深夜早朝時間帯に新たに欧米主要都市への就航が検討されている。

以上のような首都圏空港における国際航空機能拡充は、観光・ビジネス需要の増加、輸出入・物流の活性化、空港周辺地域の開発促進による不動産・建設需要の増加などさまざまな経済効果をもたらすと考えられるが、とりわけ直接的に日本経済の活性化に大きな効果をもたらすと考えられるのは、訪日外国人の増加に伴う国内消費の喚起である。国土交通省の試算によれば、2010年の首都圏空港における国際線の発着回数の増加によって、生産額は約9,800億円増加し、このうち訪日外国人の増加による生産誘発額は約8,900億円と推計されている(表)。この数字には2007年度の1便あたりの旅客数等をもとに推計しているなど、足元の経済情勢などは反映されていないといった推計上の制約はあるが、推計された訪日外国人の増加(約220万人)は2008年の835万人の26%に当たることから見ても、大きな経済的インパクトを与えることは確かである。

表 首都圏空港における国際航空機能拡充による経済波及効果

この首都圏空港における国際航空機能拡充は、首都圏だけでなく地方にも大きな経済効果をもたらす可能性が期待できる。首都圏空港を介して我が国の各地を訪れる外国人観光客やビジネス客が増加すれば、地域経済の活性化が図られよう。そこで重要になるのは首都圏空港の国際線と国内線の乗り継ぎの利便性の向上である。鉄道やバスなどの乗継手段の充実によって乗継所要時間の短縮を図るだけでなく、荷物の運搬など乗り継ぎの際のバリアフリー化や乗継客に係る案内の充実なども重要となる。

首都圏空港の国際航空機能拡充が地域活性化の起爆剤となることを期待したい。

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