注目されるデジタル・サイネージ

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2009年07月09日

  • 藤巻 潤一
2007年後半から広告の分野で「デジタル・サイネージ」(以下、DS)が注目されている。DSの明確な定義はないものの、一般家庭以外の場所で液晶パネルやプラズマディスプレイパネルなどの電子ディスプレイで情報発信されるメディアあるいはシステムと言える。街頭の大型ビジョンのみならず、店舗、駅、空港、電車、エレベーターの中でも見られる。商品やサービスの販売促進、交通機関や金融機関の情報提供のみならず、社内の従業員教育や情報共有、地域や商店街の活性化のために利用されている。

DSは2001年頃に欧州から始まった。日本での成功事例としてはJR東日本企画の「トレインチャンネル」が挙げられる。同サービスは1991年に山手線の車両のドア上部に9インチ液晶モニタで文字情報を提供したのが始まりである。2002年4月には「トレインチャンネル」と名付けられ、全てのドア上部に15インチ液晶モニタを2画面並べる現在の構成となった。2006年12月には中央線快速、2007年12月には京浜東北線にも導入された。

日本のDS業界は堅調に拡大しており、2008年におけるDS関連システム販売は400億円を上回る規模に成長したもようである。この背景には、1)ディスプレイの薄型化や軽量化によって設置可能な場所が増えたこと、2)ディスプレイの価格下落で初期投資が抑制できたこと、3)動画の活用で新たな販売促進ツールとして高い効果が期待できること、4)システム提供業者の商材が充実してきたこと、5)デッドスペースがディスプレイの設置場所として新たな収入源になると考えられるようになったこと、6)海外で複数の成功事例が見られるようになったこと、などがあったと推測される。

中国にはDSを主力事業として上場を果たしたベンチャー企業が存在する。空港や飛行機でのサイネージが主力のAirMedia Group社(Nasdaq、AMCN)、バスや地下鉄でのサイネージが主力のVisionChina Media社(Nasdaq、VISN)が挙げられる。また、2008年12月にはエレベーターでのサイネージで実績のあったFocus Media Holding(Nasdaq、FMCN)が当該事業を大手ポータルサイト業者のSina社に10億ドル超で売却することに合意した。

将来的には更に進化したDSが誕生しよう。例えば、1)通信回線を利用したインタラクティブ性が高まったもの、2)超薄型化・曲面対応・3次元映像対応などでデザインの多様性が高まったもの、3)広告効果の測定や分析ができるようになったもの、4)移動性のあるものに組み込んだもの、などが期待される。更なる技術革新やビジネスモデル創出により、今後の市場拡大が期待される。

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