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近づく衆院選挙、新政権誕生と株式市場

~焦点は行革・予算配分、安保、郵政、CO2削減、製造派遣規制

2009年07月08日

三宅 一弘

衆議院議員の任期(9月10日)が近づく中で、衆院の解散・総選挙、次期政権への思惑が交錯する。各紙世論調査の政党支持率をみると、民主党有利になっている。麻生内閣に対する支持率・不支持率を日経新聞調査でみると、直近、支持率が21%に低下、不支持率が72%へ上昇し、人気の低下が著しい。民主党政権誕生の可能性が高くなっている。
 
投票率の高低や民主党がどれだけ票を取るのかが、1つのカギになる。民主党が単独過半数ならば、ある面、すっきりするが、国民新党と組めば、郵政民営化の差し戻しが予想される。社民党と組めば、日米安保などがぎくしゃくし、対米関係が今までよりも悪化するリスクが高まるだろう。民主党幹部からは、外交・安保問題の原則として、(1)日米同盟を軸にする、(2)国連決議を遂行する、(3)アジアと共存共栄、の3つを挙げ、政権が民主党政権に変わっても大きく変わらないとの発言があるが、不透明な面がある。北朝鮮が強硬姿勢を強める中で、日米同盟が揺らぐと東アジア情勢が不安定になる。一方、自民党の議席が200を切るくらいまで惨敗する場合には、自民党の分裂や政界再編の動きが強まりそうだ。
 
民主党が相対的に国民に支持されている最大の理由は、今の自民党が制度疲労をおこし、国民が変化(チェンジやリセット)を希求しているからである。自民党は、戦後以来、ほぼ一貫して政権与党を続けてきたが、日本の経済・社会や外部環境の激変に対して財政、行政機構(官僚システム)などは基本変わっておらず、時代の変化に対応しきれていない。各省庁の縦割りで予算が決まり、その配分(シェア)が硬直的な現行体制に対して、民主党は、予算(一般会計、特別会計)の思い切った見直しや、霞ヶ関(公務員制度)改革(例えば、政治家100人を霞ヶ関に送り込む)を打ち出している。国民の間に「民主党に一度やらせてみよう」との考えが増えているように推察される。
 
マニフェストが発表されていないため、不明な点もあるが、経済政策面では、民主党と自民党との間に大きな差異はなさそうである。麻生政権が打ち出した約15兆円の大規模経済対策の内容は、民主党が打ち出した2年間で21兆円の緊急経済対策と内容が似通っている。民主党の連立政権が衆議院でも与党になれば、衆議院と参議院のねじれが解消し、政策が進行しやすくなる。なお、民主党は、高速道路の無料化や農家の戸別所得保障など消費者支援の色彩が強い(国民受けしやすい)政策を打ち出しているが、消費税の引き上げを4年間行わず、行革や「霞ヶ関の埋蔵金(特別会計のうちの余剰金や積立金)」を活用することなどで賄うとしている。民主党に対して財源の根拠に乏しいとの批判が強い。
 
民主党の経済政策の特徴は、温暖化ガスを2020年に90年比25%削減するという極めて思い切った目標を挙げている点である。麻生首相は8%削減、経団連は4%増を主張しているので、大きな格差がある。仮に25%削減目標を実行していくならば、総じて言えば、日本の経済成長率の足を引っ張るだろう。産業別ではCO2排出が多いエネルギー多消費産業、例えば、電力・ガスや、鉄鋼など素材産業などにとっては大きな負担、ダメージ(収益悪化要因)になる可能性がある。一方、これだけ野心的な目標を達成するには、太陽光や風力など新エネルギーや、原子力発電の推進、ハイブリッド車や電気自動車、エコ家電、LEDなどの普及促進策が不可欠になろう。「環境、代替・新エネルギー」推進策が大々的に行われ、関連業界には大きなメリットが生じる可能性がある。このようにみると、温暖化ガス削減推進の程度如何で、産業(企業)間で、大きな明暗格差が生じる可能性がある。
 
民主党のもう一つの積極策は少子化対策にある。子供手当制度(義務教育終了までの子供に1人2.6万円/月を支給、公立高校の授業料無料化、私立高校生への支援)を打ち出している。仮にこのような少子化対策が効果を発揮し、中長期的観点から出生率が上昇するようになれば、日本経済・株式市場に対して朗報となり、ポジティブ評価につながるだろう。
 
一方、民主党は、労働者の派遣に関して、「製造業派遣の禁止」を主張している。政権党になれば、現実的な妥協に動く可能性があるが、仮に製造業派遣の禁止が推し進められる場合、派遣業界にネガティブな上に、中長期的に日本の製造業の競争力に対して、ネガティブな効果をもたらす可能性がある。日本の製造業は、海外への工場移転を増やし、国内空洞化に拍車をかけるリスクを孕む。
 
民主党政権が誕生する場合、株式市場がどう反応するのか。上記のようなポジティブ、ネガティブの両面あるが、投票率が高く民主党政権が誕生する場合には「変化への期待」からポジティブに受け取られそうだ。来年7月には参議院選挙が控えており、民主党は気を緩めるヒマはなく、子育て支援など個人向け対策を積極化しそうである。財政改革よりもまずはバラマキ先行となり、景気回復という面ではプラス効果が生じる可能性がある。

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