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金融危機と家計防衛

2009年07月06日

木村 浩一

バブル崩壊後の日本では、個人金融資産は10年間(1989年度末→1999年度末)で、982兆円から1401兆円に419兆円(+43%)増加したが、その内約300兆円は現預金の増加によるものであった(1989年度末447兆円→1999年度末744兆円)。日本の失われた10年は、100兆円を上回る金融機関の不良債権処理によって引き起こされたが、この間、バブル崩壊による痛手が少なかった個人においては、すさまじい家計防衛が行われた。個人資金が、前川レポート(1986年)で謳われたように、貯蓄ではなく内需拡大に向かっていれば、日本の失われた10年の様相もだいぶ違っていたのではないか。

今回の金融危機では、アメリカの個人金融資産残高は49.8兆ドル(2007年末)から40.3兆ドル(2009年3月末)に9.5兆ドル(△19%)減少し、家計が保有する不動産の価値も、2006年末の21.9兆ドルから2009年3月末17.9兆ドルへ4.0兆ドル(△18%)減少した。アメリカのGDP(2008年14.2兆ドル)に匹敵する規模の個人の資産の価値が失われ、アメリカの家計はもはや株式や不動産を担保とした過剰消費を続けることは困難となっている。

また、3年後の2012年から、1946年~1964年に生まれた7800万人のベビーブーマーへの公的年金の支給(支給開始時年齢 66歳~67歳)が始まり、年金大量支給時代の到来が目前に迫っている。しかし、年平均400万人規模で大量に定年期に入いるベビーブーマーの老後生活を支えるべき年金は、株安の直撃を受け残高が17.9兆ドル(2007年末)から14.0兆ドル(2008年末)に22%減少した(アメリカ・投信協会(ICI)調査)。アメリカの年金の51%は、IRAと401(k)を含む確定拠出年金で占められ、公的年金を補うことが期待されているが、株式投信だけでIRAと確定拠出年金の3分の1を占め、IRAは1年間で24%、401(k)は22%の残高減少となった。住宅よりも時価評価された残高がすぐわかるIRA、401(k)の大幅な減少は、資産減少の痛みを実感しやすい。今後、ベビーブーマー世代は、大きく目減りした年金資産の積み増しを行い、10兆ドルのアメリカの個人消費を萎縮させていくのではないか。

資産や所得、収入の減少が一過性のものではないとなれば、アメリカの個人も家計防衛に動いていく。バブル崩壊後の日本と同様、アメリカの景気回復には長期間を要することを覚悟すべきであろう。

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